【米国「フロードスター」列伝#3】偽ファンドマネージャー妻の片棒を担いだ不正共犯“主夫”の決断

本誌「Governance Q」と公認不正検査士協会(Association of Certified Fraud Examiners=ACFE、本部=米国テキサス州)特別連携企画「アメリカ『フロードスター』列伝」第2回の元祖サイバー犯罪のゴッドファーザーに続く第3回目。今回の主人公は、家族との時間を優先するため、それまで築き上げたキャリアを投げ打って“主夫”となり、ヘッジファンドマネージャーである妻の投資詐欺に加担した「“良夫”フロードスター」である。

フロードスターの中には、動機が何であれ、自らの“我欲”が刺激され不正に手を染めるケースが圧倒的に多い。しかし今回の不正実行者は、妻のスキームに自分自身、そして家族そのものにも被害を与え、歪んだ愛情や責任感によって図らずも不正の共犯者となった。妻を信じ不正の渦に巻き込まれ、そして自らも騙された男--。その名はウィリアム・リヴォルシー。

【発生年】2003~2007年
【被害額】約650万ドル(当時のレートで約7億5400万円)
【罪種】通信詐欺の共謀、通信詐欺

リヴォルシーは、当初は妻の“実態なきファンド”に気づかなかったというが、判明後、事態収束のために彼女の不正に関与し、結果、被害者6人から受け取った資金を個人的利益のために使用する銀行口座に送金した。

2007年、連邦捜査局(FBI)の捜査が入り、主犯である妻に続き、彼も逮捕された。2人は子どもの養育のため、互いが入れ替わる形で収監された。この夫婦が被害者から詐取した金額は650万ドルに及ぶ。

本連携企画は、不正対策を使命とする世界的組織ACFEアメリカ本部の全面協力によるものである。ACFEは日本をはじめ全世界200近い支部で構成され、9万人以上の不正対策分野のエキスパートである会員を擁し、不正防止・早期発見に取り組めるよう、さまざまな教育・支援プログラムを提供している。

その一環で、「フロードスター」と呼ばれる、有罪判決を受けた不正実行者に報酬を支払わない方針でインタビューや講演を行い、カンファレンスやセミナー・ウェビナーなどを介して、不正対策教育プログラムに組み込んでいる。

今回もこれまでと同様のアプローチで、ACFE本部が「フロードスターとの会話」(Conversation with a Fraudster)と銘打ったインタビューをもとに、リヴォルシーのストーリーをお送りする。

なお、本記事にある「インタビュー」とは、上記インタビューを指す。そして、試みレベルではあるが、1950年代のアメリカの犯罪学者ドナルド・R・クレッシーの提唱した「不正のトライアングル」にも照らし合わせてみた。