マクファーランド事件と「不正のトライアングル」
ここで試みに、ドナルド・R・クレッシーの提唱した「不正のトライアングル」に当てはめてみたい。
クレッシーは、以下の“3つの要素”がそろった時に不正行為が生じると説明している。その3要素は、①不正行為を実行する動機(プレッシャー・インセンティブ)、②不正行為の実行を可能あるいは容易にする環境としての機会、そして➂不正行為の実行を積極的に是認しようとする主観的事情である正当化、と分類される。
(1)動機
金銭問題
マクファーランドは、ファイアフェスティバルを成功させるため多額の資金を必要としていた。
自己承認欲求
彼は自分のビジネス能力を証明し成功を収めることへの強い欲求を持っていた。その欲求のため、リスクの高い行動をとったと本人もインタビューで語っている。
(2)機会
内部統制の欠如
フェスティバルの運営には適切な内部統制が著しく欠如、端的に言えば、完全に欠落しておいた。それはマクファーランドにとって、自由に行動できる、いわば不正を行いやすい環境が整っていたことである。インタビューでも、彼は「自分の意見に反対する者を遠ざけていた」と語っている。内部統制が適切に機能していなかったため、彼の不正行為は早期に発見されることはなかった。「フェスティバルが近づくにつれて数字が現実味を帯びてきた時に、経験豊富な財務担当者が必要だと思い始めたが、フェスティバルの後にすべてを先送りにしようと決めた。それが明らかに間違いだった」とも語っている。
(3)正当化
失敗を認められないプライド
マクファーランドは、「成功するためには手段を選ばない」という考えを持ち、自分の行動が最終的には成功につながると信じ、正直に失敗を認めることを恐れていた。インタビューでは「フェスティバルの準備を進める際に、現実的な期限を設けずに突き進んでしまった。正直に『4月では間に合わない』と言えば、自分の能力に対する信頼が揺らぐのではないかと恐れていた」と語っている。
被害者への配慮の欠如
彼は、自分の行動が他人に与える影響について深く考えていなかった。「犯罪行為が癖になってしまったのかもしれない。私にとっては金そのものではなく、次々と新しい経験を追求することが重要だった。それが結果的に多くの人々を失望させることになった」というマクファーランド本人の発言は、自身の欲求への関心が、他者に対する配慮を上回っていたことを表している。
*
マクファーランドの行いが真に「不正のトライアングル」に当てはまるのかは別として、上記のような逆境の中で、彼の新たなるイベントは無事開催されるのだろうか。そこに起死回生を遂げた新生マクファーランドが現れるのか、字義通りのフロードスター(詐欺師)マクファーランドが再来するのか、要注目である。
ACFE本部リソース
ACFE米国本部によるマクファーランドへのインタビューは、以下のオンデマンド動画で視聴(有料)できる。また、2023年には、マクファーランドは第34回ACFE グローバルカンファレンスにウェブ登壇した。そのハイライト動画もYouTubeのACFE公式チャンネルで視聴できる。
・ウェビナー(オンデマンド)ACFE Ethics CPE: 2 *すべて英語
Conversation with a Fraudster Billy McFarland
https://www.acfe.com/training-events-and-products/all-products/product-detail-page?s=Conversation-with-a-Fraudster-Billy-McFarland-On-Demand-Webinar
・YouTube ACFE公式チャンネル *すべて英語
2023年開催 第34回 ACFEグローバルカンファレンス ハイライト動画
https://youtu.be/2q9aejiWM3A?feature=shared