ケンダル・ジェンナーらへの高額ギャラ、そして不正
集めた資金の大半は、インフルエンサーや、実際には出演しなかったアーティストへのギャランティに充てられ、フェスティバルの準備にはほとんど使われることがなかった。例えば、ケンダル・ジェンナーへのギャラはインスタグラムへのたった1つの投稿で25万ドル(当時のレートで約2750万円)! 他のインフルエンサーに対しても20万ドル(同約2200万円)は下らなかったという。
このように、見せかけのマーケティングばかりを重視し、計画性なくイベントを強行したことが大失敗につながり、責任問題となった。しかし、それだけではない、深刻な事態が明るみになる。
まず、マクファーランドは、ファイアフェスティバルの主催者として、いくつかの詐欺行為を行っていたのだ。彼は、自らが設立した会社である「ファイアメディア」と「ファイアフェスティバルLLC」の企業価値を、ニセの投資資料を作成することで大きく誇張し、80人以上の投資家から総額およそ2600 万ドル(同約27億円)を詐取。
そして、資金の不正使用も発覚する。上記のように投資家から資金を集めたものの、そのうち1300万ドルを高級車など、ゴージャスな生活を維持するために私的流用した。
さらに保釈期間中には、ニセのチケット販売会社を設立、チケットもアクセス権も保有していないにもかかわらず、ニューヨーク・メトロポリタン美術館で開催されるファッションショーであるメット・ガラといった有名ファッションショーやグラミー賞授賞式といったイベントへの高額チケットを売り捌き、少なくとも15人から15万ドル以上を詐取したのだった。
これだけでは飽き足らず、従業員の名前と口座番号を無断で使用し小切手を発行する、という銀行詐欺も行っていた。そして、これらの不正行為により、彼は6年間の懲役刑を言い渡されることになる。
反省と再起
マクファーランドは、「反省の念は非常に強い」と法廷で述べ、自身の行動が多くの人々に与えた影響について謝罪し、再起への意欲を示した。
その再起として、「ファイアフェスティバル 2」を開催するという。以前の失敗から学び、より良いイベントを提供することを目指し、そのイベントの収益をもって被害者への返済に充てる意向も示している。
ファイアフェスティバル2のチケット販売はすでに始まっており、マクファーランドはYouTubeで一次先行販売分が売り切れたことを公表し、このように語っている。
「ここに辿り着くまでが最高にワイルドな旅だった。私は、このフェスに向けられた関心と需要、そして不可能を可能にするために世界中の人々を結びつける私の能力がどのように受け止められるかについて、50ページにわたる計画を書き出した」
しかし、ファイアフェスティバル 2の詳細はいまだ明らかにされていない。
当初、今年2024年12月にカリブ海で開催と告知していたものの、現在では25年4月に延期となっている。このような不確かさにもかかわらず、1枚499~7999ドル(約7万5000~12万円)で23年8月に一次先行販売分100枚のチケットはすぐに売り切れ、現在のチケット価格は1400~110万ドル(約21万~1億660万円)と信じられないほどに高騰している。
日時や内容の詳細を告知しないままチケットを売り出すマクファーランドの手法は、以前とまったく変わっておらず、当然ながら、彼の反省には疑問の声が上がる。再び同様の問題を引き起こすのではないか――。そのような懸念は依然として燻っており、特にバハマ政府は彼を「逃亡者」と見なし、同国でのイベント開催を認めていない。