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《アメリカ専門機関と特別連携》不正実行者「フロードスター」の闇を追う新型企画がスタート!

「成功する人は、失敗から学び、別の方法でやり直す」

これは、80年を超える歴史的ベストセラー『人を動かす』の著者、デール・カーネギーの言葉である。彼の言葉のように、未来の成功に向けて過去から学び、他者の失敗事例を他山の石としたいという思いは世界共通と言える。

ところが、不正・不祥事については、その当事者・当該組織への批判をセンセーショナルに煽るだけに終始する風潮も見られる。もっとも、憤りや嫌悪感の発散が不正を正す原動力となれば、それはそれでよいだろう。

しかし、“悪人”を社会的に抹殺する、あるいは、不正は自由競争社会では不可避だと諦めるよりも重要なのは、実際のケースからスキームや不正を犯す根本原因を追究し“愚行”“蛮行”から学ぶこと――そうすることで、われわれは不正防止への新たな視点と洞察を得ることができる。そして、不正行為に対する社会の理解が深まることで、再発防止への一歩を確実に踏み出すことが可能となると言えよう。

本誌「Governance Q」では、これまで企業不祥事や不正事例をコーポレートガバナンスの視点から分析・検証してきたが、およそその射程は日本国内だけにとどまってきた。

今般、その焦点をアメリカ、そして企業などの組織体ではなく、不正を犯した当事者その人に当てて、個々の背景や過去の経験、倫理的な選択の分かれ目がどのように不正へとつながっていったのかを追い、不正の実相に迫りたい。

フロードスター、そしてACFEとは

ところで、不正を犯した個人のことを、公認不正検査士協会(ACFE、本部=アメリカ・テキサス州オースティン)では「フロードスター」(不正実行者)と呼ぶ。

1980年代までのアメリカでは、不正調査ノウハウを持たない公認会計士と、財務会計知識に疎い捜査官によって、会計不正に絡む企業犯罪捜査が行われていた。そのような中で、会計士出身のFBI(連邦捜査局)捜査官であるジョセフ・T・ウェルズが、会計と犯罪捜査双方の強みを兼ね備えた不正対策のエキスパート「公認不正検査士」(CFE)資格を創設した。

このCFE資格の認定団体であるACFEは、不正対策の教材や情報、意見交換等の場を提供し、CFE各人を支援している。その教育プログラムの一環で、ACFEアメリカ本部では、有罪判決を受けた不正実行者、すなわち「フロードスター」に報酬を支払わない形でインタビューを行い、カンファレンスやウェビナー等の形で提供している。

本特集では、ACFEアメリカ本部の全面的な協力を得て、実刑判決を受けたフロードスターを各回一人ずつ取り上げ、生い立ち、犯した不正の具体例、現在の状況、その思いなどをお伝えする。

罪を犯した当事者自身の肉声をもって語られた“闇”から、われわれはどのような教訓を引き出し得るのか――。

それは、不正調査に携わる者のみならず、極限の人間心理に関心を持つ一般の読者にとっても、有意義なものであることだけは間違いない。明日2024年11月8日からの新連載をご期待ください。

(#1につづく)

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