サステナビリティ・ガバナンスを支える「内部統制」の三層構造【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#16】

柔軟性を持った内部統制システムの構築

ところで現在、上場企業の内部統制システムに期待されているのは、「サステナビリティ・ガバナンス」の構築・運用を支える仕組みとしての役割を果すことにあるといっていいだろう。

上場企業にとって喫緊の課題は、コーポレートガバナンスや経営システムにサステナビリティを統合し、気候変動、環境、人権などに関する事業上の決定および企業の長期的なレジリエンス(回復力)の維持・強化に向けて決定する仕組みを策定し、それを実効的に機能させることであるといって過言ではない。

取締役会は、サステナビリティに関わる事項や課題を、企業価値に関わる経営課題という視点で捉える必要がある。そのうえで、自社のミッションやパーパスを踏まえて、短期・中期・長期の時間軸で経営戦略や成長ストーリーを描き、それらに即した内部統制の「基本方針・大綱」を積極的かつ能動的に議論することがこれまでより一層求められる。

そもそも、代表取締役が構築する「内部統制組織」や、業務担当取締役が構築する「担当部署の具体的な内部統制」も、取締役会で策定される「基本方針・大綱」が土台となる以上、この議論をおろそかにすることはできない。

一方、サステナビリティ課題は、時間軸や地政学、その他の外部環境の変化に即応して刻々とその内容が変化し続けていく。したがって、その課題を論じる土台となる内部統制に関する基本方針・大綱も、柔軟に変化し続けるサステナビリティの特徴に適合した、堅固でありながらレジリエント(柔軟性)を兼ね備えた内容のものとして策定される必要がある。

そこで考えるべきが、これまで、ともすれば柔軟性を欠いていた内部統制システムの在り方と言えるだろう。

サステナビリティが企業経営の核となった現代、内部統制システムも、これまでの堅固で静的なままでは時代の要請に即応して対応することに限界があるのではないか。つまり、柔軟で動的なものへと変化が求められているわけだが、これは法曹実務家である筆者自身にも当てはまることなのかもしれない。

企業法務弁護士にとっても、企業を取り巻く法的な知見をアップデートを外部に頼るのではなく、自律的にアップデートを実現する仕組を内製化して、プロアクティブに機能させることが必要だと痛感するところである。

(隔週木曜日連載、#17は5月1日公開予定)