ハローキティと企業・組織の心理的安全性【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#8】

心理的安全性は不正・不祥事の早期発見にも機能する

確かに、心理的安全性は、組織のパフォーマンス向上にとって欠かせないことは読者にとっても共感できることだろう。

「こんな発言を受入れてもらえるのか」「間違っていると嘲笑されるのではないか」などと周囲を気にしなければならない組織では、自由な発言は期待できないし、良いアイデアを生み出すことは難しい。

さらに心理的安全性は、組織の課題や不正・不祥事の芽の早期発見にとっても重要な役割を果たすことも見過ごせない。

業務で疑問や違和感を抱いたり、ミスをした場合、上長に相談・報告したら「業務の理解が足りていないと言われる」「なぜミスをしたのかと叱責される」ことを懸念して、上長や組織内のメンバーと共有することができず、その結果、組織として抱えている課題や不正・不祥事の芽をタイムリーに検知できず、長期間、組織内で浸透・蔓延してしまうことが生じるからだ。

最近、金融庁も「利用者を中心とした新時代の金融サービス~金融行政のこれまでの実践と今後の方針~」(2019年8月)のコラムで心理的安全性を取り上げている。さらに2023事務年度(同年7~6月)の「金融行政方針」でも、「金融機関等との対話等においては、金融機関の役職員の心理的安全性の確保に努める」とするなど、心理的安全性をキーワードとする姿勢をとっている。

職場等でのチーム構成員とリーダーとの対話の場面を想定する心理的安全性を、金融庁(当局)と金融機関との対話の場面でも活用し得るとの考えと言える。そのうえで金融機関との対話で心理的安全性を確保してフラットな対話に努め、当局側は、これまで以上に金融機関の状況や取り組みについての多様な情報を収集・把握する。一方の金融機関側も、変革が求められる時代に、さまざまな気づきを得て、さらにそれを自行内で展開して、多様な意見が言い合える、風通しの良い組織に変わっていくことを期待したい――。そういうところだろうか。