ハローキティと企業・組織の心理的安全性【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#8】

遠藤元一:弁護士(東京霞ヶ関法律事務所)

ハローキティにはなぜ口が描かれていないのか?

1いまや、女性はもちろん男性でも知らない人はいない「キティちゃん」は、1974年に誕生し、2024年で50周年。半世紀の間にハローキティの人気は世界に広がった。レディー・ガガやケイティ・ペリー、マライア・キャリーなど多くの著名人がファンであることを公言している。また、国連との協働でSDGsをグローバルに推進する活動までしている。世界的に認知され、愛されている日本発のキャラクターだ。

ハローキティがなぜここまで愛されるキャラクターに成長したのか。

サンリオ創業者の辻信太郎氏(1927=昭和2年生まれ)はさる12月13日の日本経済新聞の記事で、その理由を「口が描かれていないことで、見る人の気持ちに寄り添うことが出来たから」と分析している。

サンリオがホームページ上で展開する『いちご新聞』の、18年2月号でも、キティに口が描かれていない理由について、「実はそこには、やさしさや思いやりは口(言葉)で言うだけではなく、態度で示しましょう!というメッセージが込められているのです」と書かれている。

組織のパフォーマンスを左右する心理的安全性

口が描かれていないハローキティに込められた「やさしさ、思いやり」は、企業・組織文化にとっても極めて重要なキーであることが認知されている「心理的安全性」という概念とも通底していると筆者は考えている。

心理的安全性とは、意見の違いや疑問や懸念に関して素直に話しても安全だとチームメンバー全員が信じられる職場環境であると理解されている。ハーバード・ビジネス・スクールのエイミーC.エドモンドソン教授は、1999年の論文で「メンバーが発言する際に、恥じることはない、拒絶されない、罰を受けるようなことはしないという確信を持っている状態であり、チームは安全な場所であるとの信念がメンバー間で共有された状態」と定義した。

また、グーグルが、「高い成果を生み出すチーム」が共通して持つ成功要因を探し出すために2012年から開始した生産性改革プロジェクト「プロジェクト・アリストテレス」において大規模なモニタリングを展開した結果、決定的な要因が心理的安全性であり、それが高い組織やチームほど、パフォーマンスが向上するとの結果を公表した。

このことで心理的安全性は、一層注目を集めた。グーグルの社内でも心理的安全性の高いチームのメンバーは離職率が低く、多様なアイデアをうまく利用し、収益性が高いといった特徴があったとのことだ。