【ACFE JAPAN岡田理事長インタビュー後編】不正対策で公認不正検査士が果たす役割

監査役に求められる「公認不正検査士」の知見

――昨年から日本公認不正検査士協会(ACFE JAPAN)の理事長を務めていらっしゃいますが、監査役と公認不正検査士(CFE)の関連性についてはどうお考えですか。

監査役の仕事と不正検査の仕事には共通点が多いですね。だから、監査役に就任した場合、CFEのメソッドは非常に有効だと思います。

一般に日本の企業社会では、ある社員が休みも取らずに一所懸命働いていると、「あの人は真面目だ」ということで、全幅の信頼を置かれるものです。しかし、こうした環境に不正が潜んでいることもあるのです。誰からもチェックされないという状況は不正の温床になり得る。久方ぶりの人事異動があって初めて、その真面目な人が実際は横領などの不正に手を染めていたことが発覚するということは、往々にしてあることです。

こうした常識の盲点をどう克服するかについて、教育的に体系化しているのがACFEです。上のような例で言えば、「不正のトライアングル」や「不正のダイヤモンド」という理論があります。そういう知識があれば、一人だけで網羅的に仕事をさせている状況は危うい、不正を生み出しやすい環境だと気がつくものです。逆に、そういう知識がないと、不正は意外と見抜けない。

ずっとマネージメントにいて、ある時、人事で監査役になっても、こうした不正検知の考え方は急には吸収できないものです。だから、監査役はACFEで培われたメソッドをセミナーなどで受講して、まずは知識を付けていくべきでしょう。

――CFEが企業の不正防止や不正対応に果たす役割についてはどう考えていますか?

企業不祥事が後を絶たないことは周知の通りですが、それは監査役や内部監査部門がまだ完全に機能していないということの裏返しでもあります。そのような中で、不正検知・対応の専門人材が、やはり圧倒的に不足しているのは紛れもない事実です。

とかく、不祥事案を前にすると、社内の同調圧力的な方向に押し流されるものです。資格取得を通じて、自分のスキルに自信を持って不正に対峙する。そういう意味で、CFEのようなプロフェッショナリズムを持った人材が必要になります。ACFE JAPAN理事長だからの発言というわけではありませんが、もっと企業はCFE資格を持った人材を確保すべきと思いますね。

とはいえ、不正や不祥事を完全に撲滅することは、恐らく、どのような組織でも無理でしょう。金額的に軽微なものを含めると、ならなおさらです。しかし、不正はどの組織にも起こり得るものだという前提で対応すれば、早い段階でその芽を摘むことができます。その際にこそ、CFEが持つ専門知識が有用なのです。

――監査役も、内部監査担当者も、最後は“矜持”を持って不正に対峙するべきということでしょうか。

確かに、人間は弱いものですが、どうやってそれを乗り越えることができるのか――。監査役のみならず、不正・不祥事に相対する人たちすべての矜持が問われるところでしょう。最終的には“勇気”の問題になることも多い。自らの仕事で立ち止まった時に、今回の書籍が役に立てばとても嬉しいですね。