【2025年3月3日「適時開示ピックアップ」】昭和HD、ウェッジHD、マーチャント・バンカーズ、クシム

前日3月3日月曜日の東京株式市場は反発、日経平均株価終値は2月28日から629円高の3万7785円だった。28日は1100円安で今年最大の下げ幅を記録したものの、同日のニューヨーク株式市場で米半導体大手エヌビディアが反発するなど、ダウ工業株30種平均などの株価指標が軒並み上昇したのを受けて、東京市場でも買いが優勢となった。
ところが、3月3日のニューヨーク市場はトランプ米大統領の関税措置発動などを受けて、売り注文が加速、ダウ平均株価が一時、900ドルを超える下落を記録した。そんため、本日3月4日は15時過ぎ時点で前日比527円安と、反落している。
そんな3日の適時開示は416件。コーポレートガバナンスおよびリスクマネジメント関連のリリースをピックアップする。
昭和HD・ウェッジHD「持分法適用関連会社」がタイ市場で決算開示遅滞の進捗報告
東証スタンダードで昭和ゴムを傘下に持つ昭和ホールディングス(HD)は、持分法適用関連会社のGroup Lease PCL(GL)がタイ証券取引所での上場維持に関する進捗を開示し、現時点においても監査法人と協議を続けているとの進捗状況を報告したことをリリース。
GL は2020年第3四半期の決算発表が遅延し、22年8月4日になって20年の決算を発表。その後、2021年、22 年、そして23年の会計監査法人の選任ができなかったため、現在においてもその後の決算開示が遅延している。
結果、現在GL株式の売買は停止され、上場廃止猶予期間になっている。その後GLは23年7月開催の株主総会で新会計監査法人を選任、財務諸表の開示に向けて作業を進めており、GL社もタイ証券取引所社長宛てに、遅延分について近い将来に開示できると確信している旨、報告しているという。
なお、GLは昭和HDの子会社で、コンテンツ事業などを手掛ける東証グロース上場のウェッジホールディングスも持ち分法適用関連会社として同様のリリースを出している。」
【昭和ホールディングス】(開示事項の経過)Group Lease PCLが上場維持と 株式取引再開に向けた進捗について開示(3月3日18:30開示)
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250303587143.pdf
【ウェッジホールディングス】(開示事項の経過)Group Lease PCLが上場維持と 株式取引再開に向けた進捗について開示(3月3日18:30開示)
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250303587077.pdf
マーチャント・バンカーズ「ガバナンス体制指弾の匿名文書」をめぐる第三者委報告書を受領
東証スタンダードで国内外で投資事業を展開するマーチャント・バンカーズは、同社のコーポレートガバナンス体制などに疑義を呈する2023年1月に送付された“匿名文書”について、第三者委員会から調査報告書を受け取った旨、公表した。
そもそも匿名文書は、当時の会計監査人だった南青山監査法人(当時)宛てに送付されたもので、マーチャントのガバナンスやそれまでの適時開示のあり方を指弾する内容だったという。そこで同社は、23年2月から11月まで社内調査を行った。
社内調査は監査役会が、外部弁護士、公認会計士、公認不正検査士(CFE)の協力を得て、関係者へのヒアリング、関連資料の確認並びにデジタルフォレンジックなどを実施したものの、昨年2月に今度は第三者委を設置。1年以上をかけて、今回の報告書受領に至ったという。
第三者委の委員長は沼井英明弁護士、渡辺治弁護士(新樹法律事務所、CFE)、大北昌弘・公認会計士の2名が委員だった。
【マーチャント・バンカーズ】第三者委員会の調査報告書受領に関するお知らせ(3月3日17:20開示)
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250303586896.pdf
暗号資産クシム「辞任勧告の取締役」が仮処分申立で深まる混迷
東証スタンダードのクシムは、同社株主で取締役の田原弘貴氏が2月27日、東京地方裁判所に対し「取締役の違法行為差止仮処分命令申立て」を行った旨公表。地裁より、同じく取締役である中川博貴、伊藤大介および松崎祐之の3氏が書面を受け取った。
本誌既報の通り、発火点は、クシムが東証グロース上場のフィスコとの経営統合協議に当たって、昨年11月上旬、田原氏が第三者に重要情報を漏洩したとされること。昨年11月25日にクシムの取締役会は田原氏に辞任を勧告したものの、田原氏本人は辞任に応じておらず、現在も同社ホームページの役員一覧に並んでいる。なお、田原氏は1.78%を保有するクシムの第3位株主でもある(昨年4月末現在)
一方、フィスコは今年2月25日、クシムに対し田原氏の情報漏洩で被った損害賠償を請求する事態に。そして今回、田原氏が申し立てた内容は、現任のクシム3取締役がフィスコの損害賠償請求権(900万円余)につき、担保の提供など、一切の債務の消滅に関する行為をしてはならないというもの。
なお、フィスコは現在もクシムとの協業を続けると判断しており、共同事業の発展に取り組んでいくとしている。また、クシム側は「本申立ての却下を求める方針」で、田原氏とは全面的に争う構えだ。
そしてここにきて、「週刊文春・電子版」が《〈暗号資産交換所「Zaif」〉東証上場「クシム」株価70%大暴落の異常事態 背景に“内紛”…何が起きているのか〉と題する記事を3月4日に配信。暗号資産に対する関心の高まりも相俟って、注目度が増している格好だ。
【クシム】株主による取締役の違法行為差止仮処分命令申立てに関するお知らせ(3月3日17:00開示)
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250303586958.pdf
関連記事
ピックアップ
- 【米国「フロードスター」列伝#9】パーク・アベニュー銀行を破綻させた「不正頭取」悪あがきの手口…
本誌「Governance Q」と公認不正検査士協会(Association of Certified Fraud Examiners=AC…
- 一条ゆかりの日経「私の履歴書」と“企業価値の持続的な向上”【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#1…
遠藤元一:弁護士(東京霞ヶ関法律事務所) 鮮烈な、少女漫画家・一条ゆかりの「私の履歴書」 「わが人生に悔いなし」 さる2月、1カ月に及ぶ日本…
- 【2025年3月5日「適時開示ピックアップ」】フジテレビ第三者委員会委員に「公認不正検査士」山口利昭…
元タレントの中居正広氏のトラブルをめぐって、フジ・メディア・ホールディングス(フジHD)と傘下のフジテレビジョンが設置した第三者委員会で、委…
- 【《週刊》世界のガバナンス・ニュース#16】米ベン&ジェリーズ、英・蘭ユニリーバ、デンマーク・レゴ、…
アイス製造の米ベン&ジェリーズ、親会社ユニリーバからブランド買い戻し目指す 米アイスクリーム製造のベン&ジェリーズの創業者が、親会社の英・オ…
- フジテレビ問題は対岸の火事ではない〜「人のふり見て我がふり直せ」は経営者の法的な義務である〜【野村彩…
野村 彩:弁護士(和田倉門法律事務所)、公認不正検査士(CFE) 会社から“雇用”でなく“委任”されているのが取締役 文春砲に端を発したテレ…
- 東北大学大学院・細田千尋准教授「脳科学から考える“令和の新しい経営者”とは」【新春インタビュー#13…
細田千尋:東北大学大学院准教授・認知科学 / 脳科学者 「Governance Q」新春インタビュー最終回の13回は、東北大学大学院准教授で…