【2025年2月27日「適時開示ピックアップ」】三和HD、東洋シヤッター、松竹、フジHD、ブティックス、ダイワボウHD、伊藤忠、セブン&アイHD

2月27日木曜日の東京株式市場は3日ぶりに反発した。日経平均株価は前日から113円値を上げ、3万8256円で引けた。全日の終値を割り込む時もあり、方向感が定まらない1日となった。そんな27日の適時開示は309件。これらの中から、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ。周辺情報も交えて紹介する。
「三和シヤッター」「東洋シヤッター」独禁法違反で最高裁が上告棄却
東証プライムでシャッター大手の三和ホールディングス(HD、東京・新宿区)は、子会社の三和シヤッター工業をめぐる独占禁止法事件に関し、最高裁に申し立てていた上告が棄却されたと発表した。
独禁法に基づく排除命令をめぐり、三和HDは東京高裁で訴えが棄却されたことから、上告および上告の受理申し立てをしていた。三和HDは「遺憾であるが、排除措置命令と徴金納付命令が確定した」とのコメントを出した。
今回の事件は17年前のこと。2008年3月、シャッター各社の幹部らによる会合があり、その場で製品価格を10%引き上げることを“談合”したとされる。公正取引委員会は10年6月、競争を実質的に制限したとして摘発したが、三和HDは取り消しを求めて訴訟を提起していた。
三和HDによると、課徴金はすでに納付、11年3月期に特別損失として処理済みという。今回、改めて「本決定を厳粛に受け止め、今後とも社会的責任を果たすべき企業として、より一層のコンプライアンス体制の強化を図っていく」とのコメントを出している。
また、東証スタンダード上場の同業、東洋シヤッター(大阪市)も同様のリリースを出している。
【三和ホールディングス】公正取引委員会審決に対する最高裁の決定に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250227584145.pdf
【東洋シヤッター】審決取消訴訟の上告棄却および上告不受理決定に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250227584281.pdf
「松竹」広告伸び悩みで“BS事業”からわずか3年で撤退発表
東証プライムの松竹は、BS事業から撤退すると発表した。事業を担っている持ち分法適用会社のBS松竹東急の撤退費用について、「適切な範囲で負担する」とした。
開局は2022年3月と日が浅いものの、広告の売り上げが伸びず、松竹グループとして継続は困難と判断したという。開局からまだ3年が経っていない中での判断に、当初計画の甘さがあったと言わざるを得ない。
【松竹】松竹グループのBS放送事業撤退に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250226582584.pdf
「フジHD」の日枝久相談役が経営諮問委員辞任
東証プライムのフジ・メディア・ホールディングス(フジHD)は、元会長で取締役相談役の日枝久氏(87歳)が2月27日付で経営諮問委員を辞任したと発表した。
経営諮問委員会はコーポレートガバナンスの充実や経営課題を話し合うために2023年6月に設置され、フジHDの独立社外取締役であるキッコーマン名誉会長の茂木友三郎氏(90歳)が委員長、清田瞭・大和証券グループ本社名誉顧問(79歳、元日本取引所グループCEO=最高経営責任者)、伊東信一郎・ANAホールディングス最高顧問(74歳)ら同じく独立社外取の2人が委員を務める。
フジHD社内からは日枝氏と嘉納修治前会長(75歳)が委員となっていたが、嘉納氏は1月27日付で会長職と合わせて辞任。そして日枝氏が今回辞任したことで、フジHD社長の金光修氏(70歳)とフジテレビジョン社長も兼任する清水賢治HD専務(64歳)が委員に就任した。
日枝氏はフジ産経グループ内で絶対的な権力を持っているとされ、その去就が注目されているが、報道各社によると、日枝氏は自宅で転倒し、腰椎骨折で入院しているという。
【フジ・メディア・ホールディングス】経営諮問委員会の委員の変更について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250227583867.pdf
介護業界M&A「ブティックス」、IT企業「ダイワボウHD」子会社が不正アクセスの被害
東証グロース上場で介護業界のM&A(合併・買収)支援を手がけるブティックス(東京・港区)は、子会社のリアライブのサーバーが不正アクセスを受けたと発表した。2月25日に発覚した。新卒者向けの情報システムに登録した人の氏名や大学、メールアドレスなど計35万件の情報が漏洩した可能性があるという。
このほか、東証プライム上場のIT事業、ダイワボウホールディングス(HD、大阪市)も、子会社のオーエム製作所のサーバーが不正アクセスを受けランサムウェアの感染被害があったと発表。取引先の情報が漏洩した可能性があり、現在、被害状況を調べている。
不正アクセスは上場企業本体ではなく、子会社で相次いでいるようだ。
【ブティックス】当社子会社のサーバーに対する不正アクセスの発生について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250226583007.pdf
【ダイワボウホールディングス】連結子会社におけるランサムウェア被害の発生及び個人情報漏えいの可能性に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250227583766.pdf
「伊藤忠」、「セブン&アイHD」創業家による買収提案の検討終了
東証プライムの伊藤忠商事は、セブン&アイ・ホールディングス(HD)の創業家から受けていた買収提案の検討を終えたと発表した。
〈創業家による株式会社セブン&アイ・ホールディングス買収提案に関し、創業家より戦略パートナーとしての出資参画要請を受け真摯に検討を進めてまいりましたが、この度、本件検討を終了したことをお知らせいたします〉
わずか3行の素っ気無い一文だが、事業化に至らなかったことを企業として開示することは極めて珍しい。
これを受けてセブン&アイHD側も関連するリリースを発表。伊藤順朗副社長と伊藤興業から買収に関する正式提案に必要となる資金調達の目途が立たなくなった旨の連絡を受領したことを明らかにした。
引き続き、カナダコンビニエンスストア大手、アリマンタシォン・クシュタールからの提案を含めて検討していくという。
【伊藤忠商事】株式会社セブン&アイ・ホールディングス買収提案に関する検討終了について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250227583295.pdf
【セブン&アイ・ホールディングス 】一部報道について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250227583252.pdf
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