【2024年11月15日「適時開示ピックアップ」】富士ソフト、クオンタムS、兵機海運、ＪＳＢ、歯愛メディカル、白鳩

11月15日金曜日の東京株式市場は反発した。日経平均株価の終値は3万8642円で、前日比107円高かった。円安の進行を好感したと見られる。そんな15日の適時開示は227件。この中からコーポレートガバナンスやコンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ、周辺情報も交えてお送りする。

TOB「富士ソフト」はＫＫＲに賛同、ベインには反対

東証プライム上場でIT企業の富士ソフトは、米投資ファンドのKKRによる株式公開買い付け（TOB）に賛同表明した。同時に、同じくTOBに動いていた米投資ファンドのベインキャピタルには反対。KKRは11月18日以降、2回目のTOBに入るが、買い付け価格を1株あたり8800円から9451円に引き上げた。 ベインは9450円を提示しており、KKRが1円上回る価格となった。

米投資ファンドによる争奪戦として注目を浴びていたTOBだが、KKRで決着するのか。そして、富士ソフトのTOB後のガバナンス体制もどうなるのか。関係者は今後の成り行きを固唾を呑んで見守っている。

【富士ソフト】FK 株式会社による当社株券等に対する第２回公開買付け 及び株式会社 BCJ-88 による当社株券等に対する公開買付け に関する意見表明の決議についてのお知らせhttps://www.release.tdnet.info/inbs/140120241115524859.pdf

「クオンタムソリューションズ」タイ企業に不信感で“EV事業”撤退

東証スタンダードでITやゲーム事業に取り組むクオンタムソリューションズは、EV（電気自動車）事業から撤退すると発表した。

2021年7月からタイの企業にEVの製造を委託したが、この企業が生産計画を繰り返し延期したほか、前渡金を他の債務に充てた疑いも浮上している。一方、低価格な中国製のEVが世界の市場に溢れてEVをめぐる事業環境が厳しさを増し、撤退を決めたという。

クオンタムソリューションズはこの企業に対して、７億円の前渡金 や、2500万円の貸付金といった債権を持っているが、貸倒引当金として計上しているという。

ちなみにクオンタム社は1999年設立の02年上場。今年5月には中東投資コンサルトなどの経歴を持つ85年生まれのＦ.ビンロン・ジョー氏が社長に就任すると同時に、代表取締役会長には08年発足の麻生太郎政権で官房長官を務めた自民党所属の元衆議院議員、河村建夫氏（42年生まれ）が就いている。

ガバメント（行政府）を司った経験を持つ河村氏が、いかにコーポレートガバナンスを構築するか、要注目である。

【クオンタムソリューションズ】EV 及び自動車関連事業からの撤退について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241115524734.pdf

「兵機海運」富洋海運＝堂島汽船によるTOBに“反対”表明

本誌「Governance Q」でも既報の通り、東証スタンダード上場の海運会社、兵機海運は、同社の株式を対象にした堂島汽船（大阪市、未上場）によるTOBに反対することを表明した。

兵機海運のリリースによると、堂島汽船は、事前に何の通知や連絡もなく、一方的にTOBを始めたとしている。このため、取引先や労働組合などのステークホルダーが混乱。このTOBに反対していると訴えた。

また、両社のシナジー効果は期待できない、とも説明している。堂島汽船の親会社である富洋海運の開示資料よると、TOB期間は10月18日から11月29日となっており、今月下旬に向け、富洋が次の手を出すのか注目度が高まっている。なお、同社サイトによると、公開買付代理人は三田証券、復代理人はマネックス証券が務めているという。

【兵機海運】堂島汽船株式会社による当社株券に対する公開買付けに関する意見表明 （反対）のお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241115524644.pdf

京都・不動産「ＪＳＢ」社外取締役の弁護士を特捜部逮捕

東証プライム上場で学生賃貸マンションや高齢者住宅の運営・管理を行うジェイ・エス・ビー（JSB、京都市）は、社外取締役で弁護士の鈴木康之氏が法人税法違反などの容疑で逮捕されたことを明らかにした。

NHKなどマスコミの報道によると、東京地検特捜部は11月15日、鈴木氏が代表を務める弁護士法人（東京・千代田区）が法人税など計2700万円を脱税した疑いで鈴木氏を逮捕した。

鈴木氏は2013年４月から10年以上にわたってJSBの社外取締役を務めている。同社は11月15日16時に配信したリリースで、事実確認を行っていると説明し、「株主及び投資家の皆様をはじめ、関係者の皆様にはご心配と ご迷惑をおかけしますこと、深くお詫び申し上げます」と記した。なお、NHKによる逮捕情報配信は同日13時6分だった。

いまだ容疑者の状態とはいえ、コーポレートガバナンスの重責を担う社外取締役、しかも弁護士をめぐる問題だけに、JSBそのもののレピュテーションに影響を与えるのは必至と言える。

【ジェイ・エス・ビー】当社社外取締役の逮捕に関する報道について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241115524989.pdf

医家向け通販「歯愛メディカル」がニッセンに続き下着の「白鳩」をTOB

東証スタンダードで下着・ランジェリー通販の白鳩（しろはと、京都市）は、同じくスタンダード上場で医療・介護用品の医療法人向け通販や歯科関連製品を扱う商社の歯愛メディカル（Ciメディカル、石川・能美市）によるTOBに賛同表明した。ただ、買い付け価格については判断を留保した。白鳩の上場は維持される。

歯愛メディカルは現在も白鳩株式の33％を持っているが、今回のTOBで子会社化する考えだ。歯愛メディカルは医療関係の通販事業に力を入れており、今年5月、セブン&アイ・ホールディングス傘下だった女性向けアパレル通販会社、ニッセンホールディングスも買収した。白鳩も子会社化して、ニッセンと合わせて通販事業を強化するとしている。

【白鳩】株式会社歯愛メディカルによる当社株券に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241114524477.pdf

（平日連載、2024年11月18日公表分に続く）