【2024年11月8日「適時開示ピックアップ」】小林製薬、フィデア、レアジョブ、学研、関東電化、東北新社、フォーシーズ、アイロム
11月8日の東京株式市場は反発した。日経平均株価は前日より118円高い3万9500円で引けた。2025年3月期中間決算(24年9月中間決算)の発表がピークを迎えた8日の適時開示は1247件となった。この中からコーポレートガバナンスやリスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ、周辺情報も交えてお送りする。
紅麹問題「小林製薬」の損失が総額101億円に
東証プライム上場の小林製薬は、紅麴サプリが起こした健康被害に絡み、2024年12月期の第3四半期に新たに製品回収関連損失として22億2100万円の特別損失を計上したと発表した。これまでの損失と合わせると101億円になった。24年12月期の通期の純利益予想も14億円引き下げて107億円とした。なお、問題発覚以前は6500円以上だった株価は、8日終値で5510円となっている。
【小林製薬】特別損失の計上及び通期連結業績予想の修正に関するお知らせhttps://www.release.tdnet.info/inbs/140120241107515269.pdf
「フィデア」荘内銀と北都銀が合併で“日経特報”通りの行名に
東証プライムのフィデアホールディングス(HD)は、2027年1月1日に傘下の荘内銀行(山形・鶴岡市)と北都銀行(秋田市)が合併して「フィデア銀行」を設立すると発表した。両行が09年に経営統合してフィデアHDが誕生してからすでに15年が過ぎ、「フィデア」という名前が浸透していることなどを理由に挙げた。フィデアは、ラテン語のFIDEs(信頼)と英語の Alliance(連携)を組み合わせた言葉という。本誌「Governance Q」既報の通り、フェデア銀行という名称は日経新聞がスクープしていた。
【フィデアHD】当社完全子会社である荘内銀行及び北都銀行の合併及び商号変更に関するお知らせhttps://www.release.tdnet.info/inbs/140120241107514779.pdf
オンライン英会話「レアジョブ」株式を三井物産から学研が取得
東証スタンダードでオンライン英会話サービスを提供するレアジョブ(東京・渋谷区)は、学習塾など教育サービスを展開する東証プライム上場の学研ホールディングス(HD)と資本業務提携する。レアジョブの第2位株主、三井物産が保有する約19%の株式を学研に譲渡する(筆頭株主は21%超保有の中村岳社長、ともに2024年3月末現在)。今後、オンライン学習サービスだけではなく、新たな学習分野に進出や、新規の顧客の獲得に向けて両社で取り組んでいくとしている。
【レアジョブ】株式会社学研ホールディングスとの資本業務提携、株式の売出し、 三井物産株式会社との資本業務提携の解消及び主要株主の異動に関するお知らせhttps://www.release.tdnet.info/inbs/140120241107514583.pdf
「学研HD」が買収防衛策を廃止
東証プライムの学研ホールディングス(HD)は、12月20日開催予定の臨時株主総会をもって買収防衛策を廃止すると発表した。買収防衛策には、議決権助言会社などが反対を推奨しており、学研HD側は、機関投資家が反対しており株主の意見を踏まえて判断したと説明している。なお、学研HDの筆頭株主は12.59%を保有する公益財団法人古岡奨学会(創業者、古岡秀人が設立)で、以下はともに信託口の日本マスタートラスト信託銀行(9.46%)、日本カストディ銀行(3.65%)と続く。
【学研HD】大規模買付ルール(買収防衛策)の非継続(廃止)に関するお知らせhttps://www.release.tdnet.info/inbs/140120241108516079.pdf
水質汚染の贖罪?「関東電化工業」前橋市水道局に3億円の協力金
東証プライム上場で化学品メーカーの関東電化工業は、群馬県前橋市水道局が実施する水道施設更新事業に対して3億円の協力金を支払うと発表した。前橋市田口地区周辺の水道水は井戸を水源とする浄水場から供給されているが、一部の井戸からテトラクロロエチレンという化学物質が検出されたため、1989 年に同水道局が除去装置を設置し、汚染物質を除去したうえで飲料水を供給している。
このテトラクロロエチレンは、田口地区の北側に位置する工業団地(群馬県)に埋設された関東電化のカーバイドのカスに含まれていたものだという。今回、田口浄水場の廃止と、田島浄水場拡張計画が決まり、社会的、道義的立場から前橋市水道局と話し合い、市に対して協力金を支払うことにしたと説明している。
ちなみに、関東電化は1938(昭和13)年設立の古河財閥の流れを汲む老舗企業。〈会社の永遠の発展を追求し、地球環境との調和を図りながら適正な利益を確保することにより、株主、ユーザー、従業員と共に繁栄する企業を目指して持続可能な社会づくりに貢献する〉と経営理念を謳っている。なお、同社は今回の適時開示で〈土壌汚染対策法(2003年施行)に規定している汚染原因者ではない〉との認識としている。
【関東電化工業】前橋市水道施設更新事業への協力金の支払いに関するお知らせhttps://www.release.tdnet.info/inbs/140120241108515749.pdf
3Dと交渉打ち切り「東北新社」の希望退職に124人応募
東証スタンダード上場でテレビ番組や映画を制作する東北新社は、今年8月に公表した45歳以上を対象にした希望退職者の募集について、その結果を発表した。100人ほどを募ったところ、124人の応募があった。退職金の特別加算金など必要な費用は21億円で、特別損失で処理する。なお、東北新社の社員数は1561人(連結、2024年3月末実現在)。
東北新社はシンガポールの投資ファンドで活発な活動で知られる3Dインベストメント・パートナーズから株式公開買い付け(TOB)とそれに伴う非公開化の提案を受けていたが、今年9月にデューデリジェンスの実施をはじめとする協議や交渉を打ち切ったことを明らかにしている。
【東北新社】希望退職者募集結果及び特別損失の計上に関するお知らせhttps://www.release.tdnet.info/inbs/140120241108515803.pdf
化粧品通販「フォーシーズ」子会社の債務保証で決算発表延期
東証スタンダード上場で、化粧品の通販を手がけるフォーシーズHD(福岡市)は、11月8日に予定していた2024年9月期の決算発表を延期した。連結子会社のクレイトン・ダイナミクスの借入金の連帯保証について、引当金を計上するどうかついて海南監査法人と検討しているが、同監査法人から「確認及び検証作業に時間を要する」との連絡を受けたためとしている。発表は11 月14 日を予定している。
【フォーシーズHD】2024 年9月期決算発表延期のお知らせhttps://www.release.tdnet.info/inbs/140120241108516882.pdf
再生医療「アイロム」MBOはオーストラリア当局の許可待ち
東証プライム上場で再生医療や遺伝子創薬を手掛けるアイロムグループ(東京・千代田区)は、今年5月に発表したMBO(経営陣による自社買収)の進捗状況について発表した。条件となっていたオーストラリア当局の許認可(競争法)の取得ができていない状態としている。
豪州当局の最終的な判断は2025年2月6日までに公表される予定とのことで、同年2月末日までには、株式公開買付け(TOB)が開始される見通しという。このMBOは米投資ファンドのブラックロックで組んで実施される。ブラックロックは製薬事業で投資実績があり、グローバルな知見やネットワークによってアイロムグループの成長につながるとしている。
なお、1997年創業の同社の筆頭株主はバイエル薬品、グレラン製薬出身の創業者、森豊隆社長で39.48%(24年9月末現在)を保有する。24年3月期の売上高は前の期の183億円余から177億円余に少し減少したものの、順調に売り上げを伸ばしているが、純利益は25億円から14億円に大きく減少。ここ5年を見ても、右肩上がりの状況とは言えない。
【アイロムグループ】ビー・エックス・ジェイ・ビー・ツー・ホールディング株式会社による 当社株式に対する公開買付け実施に向けた進捗状況のお知らせhttps://www.release.tdnet.info/inbs/140120241108516897.pdf
(平日連載、2024年11月11日公表分に続く)
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