三菱UFJアセットマネジメントが「選任反対」した取締役・監査役リスト#2《4000~6000番台企業》
後藤逸郎:ジャーナリスト + Governance Q特集班
賛成率が最も低かった電気興業社長
(#1から続く)続いて上場企業の証券コード4000~6000番台の1835社のうち、三菱UFJアセットマネジメントが2024年3月期決算企業の定時株主総会(6月開催企業)に提案された議案に反対した企業について分析した。
このうち、取締役の選任案の賛成率が最も低かったのは東証プライム上場の大型通信アンテナ製造、電気興業(証券コード6706)の近藤忠登史社長の52.94%で、あわや取締役解任寸前だった。前年より17.22ポイント減。業績低迷を理由に反対票が集まった。
近藤氏が21年4月に社長就任後、同社は24年3月期まで3期連続で減収減益。直近2期連続で経常赤字、純損失を拡大した。同社の大株主には、親密先にあたる電気興業取引先持株会(3.66%)と電気興業従業員持株会(2.66%)がある。両者の賛否は公表されていないが、仮に会社提案に賛成していたとしても薄氷を踏む結果だったことになる。
次に賛成率が低かったのは東証プライム上場の精密機械製造、ツガミ(同6101)の社外取締役の久保健氏の59.5%だった。前年より9.3ポイント減。反対理由は出席率と独立性。久保氏は三井住友銀行副頭取や三井住友カード顧問などを歴任。三井住友銀は同社の上位の大株主にあることから、独立性に疑義を示された格好だ。久保氏は独立性を理由に反対された取締役提案でも最も賛成率が低かった。
久保氏へのもうひとつの反対理由である出席率を見ると、久保氏は前期の取締役会10回のうち7回に出席。全取締役中最低の出席率だった。
業績低迷が反対理由だった企業のうち、取締役の選任案の賛成率が前年より下落幅が最も大きかったのは前述の電気興業。次いで東証プライム上場の男性用化粧品大手、マンダム(同4917)の西村健社長だった。賛成率は68.65%で、前年より17.2ポイント減。父親の元延会長の賛成率は息子より低い67.85%で、前年より12.48ポイント減。24年3月期は前期より増収増益だったものの、過去5年間で最も良かった20年3月期と比べると、売り上げは約1割減、純利益は約4割減にとどまった。
業績低迷を理由に賛成率が低かった他の取締役は、東証プライム上場のコニカミノルタ(同4902)の大幸利充社長の64.68%だった。前年より6.77ポイント減。売上高と純利益は前期より増収増益で、5期ぶりの黒字転換を果たした。ただ、19年3月期と比べ、売上高は上回ったものの、純利益は約10分の1程度に萎んでいる。
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