検索
主なテーマ一覧

JAL“説明なき”社長解任「空港施設」にプライム上場の資格はあるか#2【株主総会2023】

2年後には「国交省にトップ返上」の密約

#1記事では、空港施設の生い立ちと株式上場、そして、6月29日の定時株主総会で、出身元で大株主の日本航空(JAL)と、同じく大株主のANAホールディングス(以下ANA)から社長再任を否決された乗田俊明氏の社長就任までを追った。

2021年6月、社内でのパワーハラスメントを指弾されて、国土交通省出身の甲斐正彰氏がトップの座を追われたのを受けて新社長に就任したのが、2017年6月にJALから副社長として送り込まれていた乗田氏だった。

とはいえ、何かにつけてJALとANAのバランスが重視されるこの会社ゆえだったのだろう。JAL出身の乗田氏が社長に就任する一方、会長にはANA出身の副社長、稲田健也氏が就いた。前出『50年史』にも巻頭の挨拶文に、にこやかに笑うこの二人のツーショットが掲載されている。

いずれにしても、会社設立以来、旧運輸省OBがトップに就かない人事は、これが初めて。株主総会直前に再任予定だった甲斐氏が候補から外れたことで、国交省側も準備が遅れたのだろう。取締役の序列では9位だった国交省OBの山口勝弘氏(1983年旧運輸省入省、元国交省東京航空局長)が、自薦で代表権のある副社長に昇格するのが精一杯だったとされる。

今年2023年3月に国交省による人事介入が発覚した際に実施された特別調査の報告書によれば、2年後にはトップの椅子を国交省に返すことをJAL、ANA両社ともに了解していたというのが山口氏の認識だったようで(JAL、ANAは否定)、その2年後が今年の株主総会だった。

山口氏を社長に昇格させるよう、元国交事務次官で東京メトロ会長(当時)だった本田勝氏(1976年旧運輸省入省)が2022年12月に乗田氏、稲田氏に要望したが、両氏が厳格なコーポレートガバナンスが求められる東証プライム企業として受け入れられないとして、これを拒絶、この経緯が今年3月に朝日新聞にスクープされたというわけだ。

JALらによる「乗田社長解任」は指名委の想定内? …
1 2 3

ランキング記事

【PR】内部通報サービス無料オンデマンドセミナー

ピックアップ

  1. 織田信長「見た目にいかにも器用そうにふるまう者は、実は無分別の真っ盛り」の巻【こんなとこにもガバナン…

    栗下直也:コラムニスト「こんなとこにもガバナンス!」とは(連載概要ページ) 見た目にいかにも器用そうにふるまう者は、実は無分別の真っ盛り織田…

  2. 英国に降り立った「LIBOR“不正”操作事件」元日本人被告の過酷【逆転の「国際手配3000日」#1】…

    有吉功一:ジャーナリスト、元時事通信社記者【関連特集】日本企業を襲う「海外法務リスク」の戦慄 はこちら 1人の日本人ビジネスマンが今年7月、…

  3. エネルギーテック企業エネチェンジ「会計疑義問題」3億円の第三者委員会がシロ判定でも“創業者は追放”へ…

    エネルギー問題の将来を担う企業として期待されたエネチェンジ(東証グロース)の創業者、城口洋平CEO(最高経営責任者、37歳)が7月末、会計疑…

  4. 【フランス内部通報者保護制度】現地弁護士が詳細解説《後編》…

    パトリック・ティエバール(Patrick Thiébart): 弁護士(フランス在住) (前編から続く)フランスにおける内部通報制度の最新事…

  5. 「刑務所で性被害に…」とアメリカ捜査官に脅された日本人ビジネスマン【海外法務リスク#2】…

    有吉功一:ジャーナリスト、元時事通信社記者 (#1から続く)2010年代に日本の自動車部品メーカー40社超が米司法省に摘発され、30人超の日…

  6. 【海外法務リスク#1】巨額罰金、禁錮刑、域外適用、リニエンシー…日本企業を狙う「海外司法当局」の責め…

    有吉功一:ジャーナリスト、元時事通信社記者 グローバル化の進展に伴い、日本企業が直面する国際法務リスクが近年、一段と高まっている。米国では2…

あなたにおすすめ

【PR】内部通報サービスDQヘルプライン
【PR】日本公認不正検査士協会 ACFE
【PR】DQ反社チェックサービス