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『公益通報者保護法に基づく事業者等の義務への実務対応』著者、中野弁護士が語る「内部通報制度」無関心のリスク

内部通報制度を機能させるための「前提」

2022年3月に『公益通報者保護法に基づく事業者等の義務への実務対応』を上梓し、今年3月にその改訂版を上梓しました。タイトルに「実務対応」とあるように、企業などの組織内の公益通報対応業務従事者(従事者)や弁護士といった、まさに内部通報対応の実務に携わる方に向けた書籍として執筆しましたが、初版については出版元である商事法務の方からは「売れ行きが良かった」と聞いています。

改訂版では、実務運用等に照らして内容を全体的に見直したほか、事業者の皆様の公益通報者保護法の履行に役立つようチェックリストを作成しました。

公益通報者保護法は、20年6月には事業者に内部通報対応の体制整備義務などを盛り込んだ法改正が行われ、22年6月から施行されています。一方で消費者庁の調査でも示されているように、20年改正で課された重要な義務である「従事者指定義務」や「体制整備等義務」が施行後も十分に履行されていないのが現状です。

こうした観点を踏まえて、改訂版では、例えば、〈従事者の指定に関するチェックリスト〉という項目で、

□内部通報窓口だけではなく、ハラスメント窓口やお客様相談窓口等を含む自社の部門横断的な窓口の全てについて、実質的に「内部公益通報受付窓口」にあたるか否かを検討しているか

□上記の検討の結果「内部公益通報受付窓口」と判断した窓口について、指針への対応状況等を検討しているか

□規程上、①内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関して公益通報対応業務を行う者であり、かつ、②当該業務に関して公益通報者を特定させる事項を伝達される者の全てを従事者として定めることとされているか

といったように、公益通報者保護法の義務の履行に欠かせない事項について対応できているか、チェックリスト方式で、できるだけ簡便に確認できるようにしています。

公益通報者保護法は内部通報制度の最低限の基準を定めたものです。同法を履行することは、各企業において内部通報制度を機能させるための「前提」であり、今回の改訂がその一助となることを望んでいます。