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“検察官出身CFE”高橋麻理弁護士が考える「不正調査」と「社外役員が担う不正防止」【第三者委と不正検査の現在地#3】

不正調査が「社内政治」に利用されるリスク

一般的に不正が発生すると、社内のコンプライアンス部門や法務部などで対応することになりますが、外部の私に調査の依頼が来るときは、基本的に私自身が弁護士であるのはもちろん、元検察官であったり、公認不正検査士(CFE)であったり、そういったキャリアや資格に対しての“期待”があることを強く感じています。

不正調査もほかの契約と同様、会社との契約になり、会社側から報酬を得るという立場になります。にもかかわらず、数多いる専門家の方の中から私が選ばれたのは、しっかりと公正な調査がなされて公正な結果が出ることへの期待があるからだと解釈しています。

私自身、その点を一番大事にしていますし、実際の調査に当たっても自分の立ち位置をきちんと説明をしたうえで、役職員などから安心してお話していただくことに細心の注意を払っています。

一方、不正調査を実施するに当たって注意すべきことは、ともすれば、「社内政治」に利用されることもあり得るということ。この点は特に肝に銘じるようにしています。

派閥同士の争いで敵対グループを追い落とすために針小棒大に問題を騒ぎ立て、調査によって“お墨付き”を得たい――。案件によってはそういう思惑が感じられることもあるので、そこは一歩も二歩も引いた立場で、必ずしも当該企業の意向に沿わない結論が出ることもあるということをはっきりと説明したうえで、依頼を受けるかどうかも含めて慎重に判断しています。

不正調査が社内政治に利用されるケースとしては、社長をはじめとする経営層に関する疑惑が、例えば内部通報で発覚したとするようなものもあります。特にハラスメント事案などでは、必ずしも客観証拠が十分でないこともあって、ハラスメントだと主張する側の証言が果たして信用できるものなのか、結局のところ、客観的な裏付けがないまま評価しなくてはならない場合も出てきます。

そういうケースにおいて証言の信用性を評価するに当たっては、検察官としての捜査経験やCFEとしての知見が活きていると感じます。不正調査にあたっては、証拠を正しく評価する能力、証拠に基づき事実を認定する能力、そして、たとえその事実が、短期的にはクライアントにとって耳の痛いものになり得ても、毅然とその事実に基づき不正の実態を明らかにする姿勢が重要だと考えています。

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