presented by D-QUEST GROUP

結城大輔弁護士「不祥事の真相究明に生命を吹き込むのは“経営者の信頼と覚悟”である」【第三者委と不正検査の現在地#2】

経営トップの覚悟次第で社員の心理も変わる

次に「経営トップの覚悟」。繰り返しになりますが、そもそも調査委員会の調査に強制力はありません。しかし調査委員会を設置した以上、その調査結果を充実させ、適正で公正なものにできるかどうかは、企業側、つまり経営者の覚悟次第ということになります。

特に経営トップに、本気で真相究明に向き合って、その結果を分析し、再発防止策に取り組むのだという覚悟があれば、おのずと他の役職員たちにもその気概が伝わって「自分たちも本気で調査に協力しなければならない」という心理になるものです。結果、資料も隠し立てせずにきちんと提出するでしょうし、腹を割って真実を話すようになる。

しかし、経営トップが真相究明に対して中途半端な姿勢で臨んでしまうと、いくら調査委員会が全力で調査を行っても、調査そのものが中途半端に進んでしまいます。

そうした煮え切らない状況の中で、堪りかねた誰かが外部に向けていきなり“真実”を語り始めたり、デジタル・フォレンジックで辻褄の合わない新たなデータが出てきたりすると、調査は振り出しに戻り、企業自体が大きな混乱に陥ってしまいます。

当然ながら、それでは十分な調査が実施できず、調査結果も不十分な内容になってしまう。真相究明を果たすことができないまま、場渡り的な再出発を余儀なくされるうえ、さらなる火種として問題がくすぶり続けることになりかねません。

感傷的な表現かもしれませんが、やはり、最終的に経営トップが真相究明、それに続く再生を本気でやり遂げる覚悟を持てるか否かで、調査委員会による調査の成否が決まってくるのです。