「天下り禁止」を掲げるアクティビストも
3例を取り上げただけでも様態はさまざまだが、共通しているのは、子会社の成長がないがしろにされていることだ。
ガバナンス問題に詳しい名古屋商科大学大学院の加登豊教授は、親会社の子会社に対する考えを目の当たりにしたことがある。
以前、上場企業の経営企画室社員が加登教授の社会人ゼミ生となった時、彼が研究テーマにしようとしたのは「子会社のマネジメント」だった。テーマ自体は悪くなかったが、しかし、その内容は驚くべきものだった。
「彼が勤める上場企業(親会社)から子会社に役員として天下った人が、大きな業績を上げたそうです。親会社は、当初予定の1期で『辞めてくれ』と言えなくなりましたが、次に天下りする人が控えているため、親会社としては人事に齟齬が生じる。親会社は、業績を上げたことを喜ぶのではなく、“余計なことをしてくれた”と困ったわけです。その親会社の意向があったのか、彼の当初の研究テーマは、子会社に天下りした人が”業績を上げないため”の施策を考えることでした」(加登教授)
加登教授の指導の下で、ゼミ生はやがてテーマ設定の間違いを認識し、方向性を修正したという。
子会社の側にすれば、親会社に支配権があり、人事権が委ねられている以上、天下りを覆すことは難しい。しかし子会社が上場している場合は、他の株主という存在がある。
近年、支配株主が存在する上場企業に対し、アクティビストファンド(物言う株主)が、支配株主からの「天下り禁止」を求める株主提案を提出する例が出ている。
22年6月に開催されたテレビ東京ホールディングス(HD)の株主総会では、香港のファンド、リム・アドバイザーズが、日本経済新聞社からの天下り禁止を提案した。テレビ東京HDには、首脳陣3名の天下りの他に日経の現役社員が20人ほど出向している。提案は、日経は新聞・電子媒体を土台とした報道が主軸であり、放送や映像コンテンツの専門家集団ではなく、テレビ東京HDの少数株主の利益を無視した人事慣行の結果が、株価純資産倍率(PBR)の1倍割れである、と主張した。
しかし、この株主提案は否決された。そして、会社側が提案した社内取締役候補7名のうち、会長、社長、専務の上位3名と、新任取締役1名の計4名、実に過半数が日経新聞社からの天下りだったが、提案通りに選任された。
親会社による「天下り」は、日本の企業が成長して余裕のある時は、親会社の社員を厚く処遇し、モチベーションを高めるという機能を発揮したのかもしれない。しかし、子会社の成長をないがしろにした天下りは歪であり、日本の企業がそれまでのように成長できなくなった中で機能不全を起こし、日本経済の“失われた30年”の原因の1つになった可能性さえある。しかしそれでも、天下りを続けている企業があるのだ。
(#4に続く)