子会社の撤退・売却を「決断できない」
一方で、内部から昇格した、いわゆるサラリーマン社長の場合、判断の是非より「決断できない」という問題がある。
経済産業省が策定した「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」(2019年6月、グループガイドライン)では、大規模な多角化企業の収益性を比較して、日本企業は欧米企業に「大きく溝を開けられている」とした。その原因は、低収益事業を抱え続けているためであり、事業ポートフォリオの最適化を図ることが課題に挙げられた。
グループガイドラインを策定するに当たり、企業にアンケートを取って分かったことは、過半数の企業で、事業ポートフォリオの構築について、経営幹部による会議で定期的に議論は行われていたこと。しかし、新規・撤退・再編を決める際の明確な基準をつくり、検討プロセスを定め、「仕組み」として運用している企業は少なかったことだ。
興味深いのは、社長へのアンケートで、事業の撤退・売却を行う時の課題を聞くと、多くが「売却等を検討する基準が明確でないこと」を挙げたことだ。社長自身が、それを課題だと認識しているのだ。
その他の課題としては、「対象事業が赤字でない限り、決断しにくいこと」「対象従業員や労働組合との調整が困難」「創業家や経営陣OBの反対」が挙げられ、社長といえども“しがらみ”が多いことが分かる。
クレジットカード子会社で不動産事業を開始したA社の例は、ワンマン社長の独断で、合理性に欠けた決定が行われた。一方でサラリーマン社長の場合、みなで集まって議論はするものの、社長以下、誰も決められないという“小田原評定”が繰り返されている姿が垣間見える。
ワンマン社長の独断にせよ、サラリーマン社長の決断不能にせよ、企業グループにおいて適切な事業ポートフォリオを構築するためには、明確な基準をつくり、検討プロセスを定め、「仕組み」として運用することが求められる。この仕組みが構築されない以上、子会社ガバナンスは機能していないと言えそうだ。
(#3に続く)