昨年3月末に東京証券取引所が《資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願い》を発信し、PBR(株価純資産倍率)1倍割れの株価は経営者の責任だと喝破。これまで「株価は市場が決めるもの」と言って憚らず、低水準の株価に対する責任逃れをしてきた上場会社の経営陣にとっては、まさに青天の霹靂だった。
さらに東証は昨年10月末には第2砲として、対応済みの会社を一覧表にして開示する方針も打ち出し、実際、1月15日に株価改善に関する具体策を開示した企業リストを発表した。東証側は集計の都合上、見落としを防ぐため、開示は適時開示システムのTD-Netではなく、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」(CG報告書)上で行うよう求めている。
そこで、本稿ではCG報告書に関する“基本”をおさらいしておきたい。
「CG報告書」提出義務化の経緯
海の向こうのアメリカでコーポレートガバナンスへの関心が急速に高まったのは2002年。2001年12月にエンロン、2002年7月にワールドコムよる巨額粉飾が発覚したことがきっかけだった。日本でも2005年にカネボウによる巨額粉飾が発覚したことを契機に投資家からの要望を受け、2006年に東証が上場企業各社に対してコーポレートガバナンスに関する対応状況をまとめたCG報告書の提出を義務付けた。
提出先は東証で、定時株主総会の終了後、速やかに提出しなければならない。最低限、年に1度の提出が義務付けられ、内容に変更があれば、その都度提出することになっている。
2006年の制度発足以降、順次記載すべき項目が増やされていくのだが、最も大きな改訂となったのは2015年。同年3月に東証と金融庁が「コーポレートガバナンス・コード」を策定すると、これに合わせてCG報告書上で、同コードにコンプライ(順守)しているかどうか、コンプライしていないのなら、その理由をエクスプレイン(説明)しなければならなくなった。
CG報告書は以下の5大項目で構成されている。
(Ⅰ)コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方及び資本構成、企業属性その他の基本情報
(Ⅱ)経営上の意思決定、執行および監督に係る経営管理組織その他のコーポレート・ガバナンス体制の状況
(Ⅲ)株主その他の利害関係者に関する施策の実施状況
(Ⅳ)内部統制システム等に関する事項
(Ⅴ)その他
(Ⅰ)にはコードへの対応状況のほか、外国人保有比率、大株主上位10者の顔ぶれと保有割合、支配株主に関する説明、上場している市場や業種、決算期、従業員数など。(Ⅱ)には監査役会設置会社や監査等委員会設置会社といった組織形態のほか、取締役の顔ぶれとその属性、独立役員の有無など。(Ⅲ)には株主総会での議決権行使比率を上げるために実施している施策や、実施しているIR(投資家向け広報)活動など。(Ⅳ)には内部統制システムの整備状況や反社会的勢力に対する考え方など。(Ⅴ)の「その他」には買収防衛策導入の有無などを記載することになっている。