子会社管理の責任が問われた「トヨタグループ不正認証問題」
③のトヨタグループの不正認証問題では、トヨタ自動車傘下の日野自動車、ダイハツ工業、豊田自動織機が起こした認証不正に関しての事実上の親会社の責任、つまりこれも②のSOMPOHDと同様、グループガバナンスが問われることとなった。
会社法では第362条4項にあるように、親会社の取締役会には〈親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制を整備〉する義務がある。だが、この条文では、子会社の経営状況の実態把握や、ガバナンスが機能不全に陥っていないかの監視などについての詳細は定められていない。
とはいえ、法律に明示されていないからと言って、親会社に責任がないわけではない。
条文で業務の適正を確保する体制整備が義務となっている以上、子会社でも内部管理体制が実際に有効に機能しているかどうかを見極め、問題があれば指摘・改善することについても、親会社(の取締役)に一定の責任があると見なすべきだろう。
特に子会社の経営者をはじとする首脳陣および幹部が、親会社から派遣されたり、親会社の指揮命令系統の下にあるようなケースでは、より一層、親会社の責任は問われて然るべきだ。果たして、長く社長を務めた豊田章男会長以下、トヨタ本体の経営陣がグループガバナンスを健全に機能させていたか、疑問は拭えない状況が続いていると言える。

社外取締役の不作為が露呈した「小林製薬“紅麹”問題」
2024年春から始まった④の小林製薬「紅麹」問題は、社内で問題を把握してからの対応の遅れが事態を悪化させた。その点で、経営サイドに対して何らのモニタリング(監視)機能を果たせなかった社外取締役の責任を問う必要がある。
問題発生時、小林製薬社には7人の取締役がおり、うち社外取は4人であった。会社から独立した役員が過半数を超えている取締役会となれば、透明性が担保されているかのように受け取られるもの。社外的には“コーポレートガバナンスの優等生”と映るだろうし、実際、オーナー企業であるものの、小林製薬にはそうした評価があったことも否定できない。
しかし、実際に蓋を開けてみれば、社外取各人はしきりに「情報が入ってこなかった」「把握できる状況ではなかった」と責任逃れに終始した。
社外取締役は企業から報酬を受ける形で“外の目”の機能を期待されているはずである。情報収集が適宜になされ、風通しよく行われる体制を整えることそれ自体、社外取の務めでもあるのだ。
本来、自らが社外取締役を務める企業で社会を揺るがすような不正・不祥事が起きれば、社外取個人も自分自身の責任問題と認識して、それを是正する必要があるし、その手腕が問われるべきものである。
企業価値を大きく毀損した場合、株主代表訴訟を起こされる可能性もあるわけで、社外取はともすれば裁判の被告人になりかねない。
実際に、一定数の株式を有する香港のファンドからは、社外取も含めて取締役の責任追及が始まったのであり、社外取の責任の在り方に一石が投じられており、今後の動きに注目したい。