「公認会計士=監査人」だから負う責任・義務
これは会計や監査の機能に対するニーズが高まっているからこその動きでもある。国際的にフェアな会計監査、サステナビリティに対する高い意識、情報開示の拡大が企業に求められる中、誰かがその内容に保証という名の「お墨付き」を与える必要がある。
そこで、企業経営への関与を狙うコンサルタントがその一部を担うことになるわけだが、コンサルタントのような非会計士の場合、企業が陰に陽にコマーシャリズムを意識して公開しかねない情報を検証する能力を保持しているとの、信頼や保証などどこにもない。それどころか、プロフェッションとしての職業的信念ないし気概、および、高度な倫理観を備えているとの証もないのである。
例えば、近年、「CO2排出量を削減している」との情報を出すことが企業価値を高めることにつながるようになっているが、一体どのような基準で、どう実行したのか、実際に環境保護にどの程度、効果があったのかまで見なければならない。
中には、「グリーンウォッシュ」と言われるように、あたかも環境に配慮したかのような情報を公表していながら、まったく実体が伴っていないケースもあるのだ。厳格な運用がなされなければ、サステナ情報の保証業務がこうしたコマーシャリズムの片棒担ぎになる事態さえ懸念される。
わが国では、2003年の公認会計士法改正により、公認会計士に対する継続的専門教育としてCPE研修(現在のCPD研修)が義務付けられることとなった。1年間40時間の自己研修を課しており、そのうちの2時間を倫理研修に充てることになっている。私自身、長い期間、JICPA(日本公認会計士協会)のCPE研修における倫理研修を担当してきた立場から、「会計プロフェッションの職業倫理」の重要性をことさら強調してきているが、それは、日本の会計士の質向上の必須条件でもあるとの確信を持っているからにほかならない。
ここでは、自主規制としての職業倫理について述べているが、要するに、ある意味で監査独占権限を排他的に与えられてきた公認会計士=監査人だからこそ、負わなければならない責任・義務がある。国や社会が公認会計士に対して監査独占権限を与えているのは、何よりも「会計プロフェッションは厳格な自主規制により、独占業務を担うに相応しい職業倫理を具備している」との保証があるからにほかならない。だからこそ、これまでJICPAは、自らを「自主規制機関」「自主規制団体」と標榜してきているのではなかったか。