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フジテック#3 オアシスの飴と鞭「会社側取締役」の保身と転向【株主総会2023】

オアシスがプロパー社長に命じた「内山会長解任」

オアシスCIO(最高投資責任者)のセス・フィッシャーからフジテック社長(当時)の岡田に宛てたメールが届いたのは、2023年3月7日のこと。〈フジテックは内山高一氏と一切の関係を絶つこと〉と示された文面は、さらにこう続いた。

〈フジテックは、定款に定めのない、内山高一氏の「会長」職を解任し、同氏のフジテックにおける一切の役割を廃止しなさい。フジテックは、内山氏との顧問契約、報酬契約、および雇用契約の全てを停止し、社用車および秘書を含むあらゆる便宜供与を中止しなさい。内山氏は今後フジテックのオフィスへの出入りを行わず、社用車は使用せず、会社の非公開情報へのアクセスは遮断される必要があります〉

一片の妥協もない“内山完全追放令”だった。

内山は、この日からわずか3週間後の3月28日に会長職を解任される。しかも、取締役会は解任議案を“全会一致”で可決したのだった。

フジテックを追放された内山は怒りを隠さなかった。

「解任されたら『即出ていけ』と言われた。社長となって20年間、会社のために尽くしてきた私に、よくぞこんなことが出来たものだ」

取締役会が、オアシス一色に染め上げられたのはなぜなのか。それを窺い知れるのは、やはり、社長の岡田に宛てたオアシスのメールの内容だった。

内山追放を命じた文面は、さらにこう続く。

〈女性の独立社外取締役を取締役会議長に指名し、日本のコーポレート・ガバナンス(文面ママ)を大きく前進させるべきです。(中略)オアシスは、海野氏が取締役会議長に最も適任と信じています〉

〈株主からの信認の割合が高かった海野氏、トーステン氏、三品氏の3名が(指名委員会に)選出されるべきだと考えます〉

これらの要求が通らなかった場合は、〈(岡田社長らの)解任に向けた株主提案〉や〈会計帳簿等の閲覧謄写請求の行使〉、そして〈留任した取締役への株主代表訴訟の提起〉という“脅し”が添えられたが、それだけではない。社外取締役への懐柔策もすでに用意されていた。