アクティビスト「丸木強」が自己採点“6月総会の我が戦績”#1【株主総会2023】
「日証金」株主総会の背後に“日銀への忖度”という大人の事情
――ストラテジックキャピタルの株主提案に対して、米ISSや、同じく米国のグラスルイスといった議決権行使助言会社の判断はどうでしたか?
丸木:我々の株主提案に対してISSやグラスルイスなどの判断はまちまちでした。ISSで言うと、大体2分の1から3分の2ぐらいは我々の提案に「賛成推奨」という印象です。確かに、議決権行使助言会社の賛成を得ることは、海外投資家への影響力という点では、追い風になると思います。
日本の投資家でもインデックス運用(指数連動を目標とした運用手法)の担当者は議決権行使助言会社の意見を参考にしているところもあるようですが、多くの日本の機関投資家は、日本の株式は自分たちで判断する傾向が強いように思います。もちろん、日本の機関投資家には判断基準があって、彼らなりに合理的に株主提案の内容を検討しています。我々の提案にも賛成してくれる日本の機関投資家が存在するのも事実です。
――逆に、いかに合理的な主張でも賛成してくれないケースもある?
丸木:ただし、最後の最後は「持ち合い」(政策保有株)や、それ以外の国内における、いわば独特な“政治力学”といったものが働くことはよくあるようです。そのことは、日証金の株主総会に絡んで実際に体験しています。最近、ある日本の機関投資家の担当者と初めて会ったのですが、2月の臨時株主総会について、その方は「現場レベルでは、ストラテジックキャピタルさんに賛成しようと思ったけど、ちょっと“大人の事情”でダメだった」とおっしゃっていました。“大人の事情”のそれ以上の内容は仰らなかったですけれども、やはり、銀行系の運用会社だったので、「(日証金に天下りを送り込んでいる)日銀には逆らうな」ということだったではないかと想像しています。
日証金に対する我々の株主提案については、今年1月くらいまでは日本の機関投資家も非常に良い反応でしたから、2月の臨時株主総会当日は、かなり良い勝負になるのではないかと期待しました。しかし蓋を開けたら、20%くらいしか賛成票が得られず、日銀に忖度するような“大人の事情”があったのではないかと訝しんでいましたので、先の機関投資家の方の発言は得心するものでした。
一方、我々にとって6月に集中する定時株主総会への株主提案は、アクティビストとしての活動の一環であって、その全てではありません。メディアは毎年6月になると、我々が期待する以上に注目してくれますが、我々にとっては株主提案をして総会に出席していろいろと発言するのも、企業に手紙を送るというのも、経営者に直接会ってお話しするということも、すべて我々にとっては重要な活動です。どれが最も効果があるのかはわかりませんから、とりあえず全部やってみる。日本経済新聞に全面広告を出すのも、ウェブサイトを立ち上げるのも同様です。
我々は株主総会前に注目されがちですが、ひとつの投資先企業に対しては年間7~10回程度、経営者と様々な機会で話をしています。総会前に注目されること自体は有り難いことですが、総会の株主提案以外でも色々活動していることも知って頂きたいと思います。
――#2では、丸木氏が「アクティビスト」目線から今年6月の注目総会を振り返る。
(#2に続く)
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