【フランス弁護士特別寄稿】フランスにおける雇用契約終了プロセス「7つの重大リスク」 ~手続き無効化を招く典型的な誤りと実務対応の要点~《Part 1》

②経済的理由による解雇

  • 競争力維持のため
    企業は、倒産の危機に瀕していなくても、将来的な経済的困難を見越して人員削減を行うことが認められています。その場合、市場の変化や競争状況に対応しながら事業を継続するために再編が必要であることを説明しなければなりません。このような人員削減の正当化は、将来の見通しに基づくやや抽象的なものであるため、業界の進化、市場動向、競争圧力を踏まえた戦略的な説明が求められます。
  • 現時点での経済的困難
    企業が現在、経済的困難に直面している場合には、売上高や受注高、営業成績の低下といった、測定可能な苦境を根拠として従業員を整理解雇することができます。このような経済的困難は、フランスではグループ全体のレベルで評価されなければなりません。

③合意解約制度(Rupture conventionnelle)

これは、2023年には51万5,000件以上が労働当局に承認された、広く活用されている方法です。

主な特徴

  • 任意の合意
    当事者双方が補償内容を含む条件に合意します。
  • 標準化された手続き
    両者には15日間の撤回期間があり、その後労働当局への届出義務があります。当局が15営業日以内に異議を示さなければ自動的に承認とみなされます。
  • 法的安定性
    理由の提示が不要なため、終了後に訴訟へ発展するリスクが低減されます。

このレポートの見解は、2025年3月に同弁護士による英語ウェビナー(フランス・フランクリン法律事務所Franklin Société d'avocats主催)で議論された重要なポイントを反映したものです。

次回、Part 2では、第2から第5の重大リスクをお送りします。

(Part 2に続く)