【サステナ道場#2】日本における人権デューデリジェンス:問われる「直接対話」の重要性
「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」の説く人権デューデリジェンス(DD)とは
(前記事から続く)日本における人権DDの現状と課題について考察する前に、その原点であるUNGPsについて簡単に説明しておくこととする。
2011年、国連人権理事会において成立したUNGPsは、世界各国における人権リスク対応のデファクトスタンダードと位置付けることができる。人権に関する、①国家による保護、②企業による尊重、③救済、の3つの責任を柱として掲げている。
UNGPsの説く人権DDは以下の4つのプロセスで構成される。
① 企業が活動を通じて引き起こした、または助長している、取引関係を通じて企業の事業・商品・サービスに直接関係する、人権への負の影響の「特定・評価」
② 負の影響を防止・軽減するための適切な「対処・行動」
③ 実施した措置の実効性の「追跡評価」
④ 対処方法および重大な人権リスクへの取り組みについての「公表・報告」
企業は、トップのコミットメントに基づく適切な人権方針を策定し、①~④のPDCAサイクルのマネジメント体制と被害者救済のための苦情処理メカニズムを構築することにより、ステークホルダーエンゲージメントを果たすことが出来る。 人権DDを実施するにあたっては、常にUNGPsの基本精神に立ち返り、原則主義をもって当たることが肝要となる。
日本における「ビジネスと人権」の取り組みと人権DDの現在地
それでは、わが国の状況はどうなっているのであろうか。日本では2020年、関係府省庁連絡会議で「ビジネスと人権に関する行動計画(NAP)」(2020~2025)の策定が行われ、22年に「責任あるサプライチェーン等における人権尊重の為のガイドライン」、いわゆる「人権DDガイドライン」が公表された。
2024年度に行われた、全上場企業および主要な未上場企業を対象としたアンケート調査の結果、日本企業における人権方針の策定状況は85%、DDの実施状況は59%であった。ただし、株式時価総額を4分類した結果、最も高い企業群においては、人権方針の策定状況は99%、DDの実施状況は88%という結果が得られている(「東洋経済CSRデータ」に基づく大和総研調べ)。
人権課題への対応は、とりわけ規模の大きなグローバル企業においては、気候変動・脱炭素とともにサステナビリティ経営における一丁目一番地となったと言っても過言ではない。
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