【ガバナンス道場#3】“ポリスマン”か“アドバイザー”か、それが問題だ!?「価値創造・戦略に貢献する内部監査」の薦め

長年にわたりサステナビリティやガバナンスの実践と研究に携わる孤高の求道者、「マッチョ三宅」こと公認会計士の三宅博人氏の不定期連載第3弾。読者の”サステナ&ガバナンス筋力向上”を目指す本道場、今回のテーマは「内部監査」。法的裏付けのない内部監査だが、近年、企業におけるその重要性は増す一方だ。そんな中、内部監査に関する1本の報告書が公表された――。その概要と内部監査の行く末を“マッチョ師範”が説く。
「価値創造に貢献する内部監査」報告書
報告書の公表
さる2024年7月16日、(公財)日本内部監査研究所「内部監査の将来について考える研究会」(以下、研究会)より「価値創造に貢献する内部監査~戦略に貢献する内部監査への進化と提言~」(座長:佐々木清隆・一橋大学大学院経営管理研究科客員教授/元金融庁総合政策局長)と題する報告書が公表された(以下、報告書)。
経営のパラダイムシフトと内部監査の役割の再定義の必要性
企業を取り巻く経営環境は激変し、いわゆる「攻めのガバナンス」と、多様なステークホルダーを重視し、サステナブルな社会課題の解決を図る「公共の利益」を追求しなければならないというパラダイムシフトに直面している。かかる状況において、内部監査の役割も再定義されなければならないという認識のもと、研究会はわが国の業種ごとのリーディングカンパニー10社の内部監査責任者(CAE)やトップマネジメントへのインタビューを含め、計30回以上にわたる議論を重ね、報告書を完成するに至っている。
報告書の概要・構成
報告書は、まず第1章において、経営環境の変化と内部監査に対する期待の増大を明らかにし、第2章で、経営機能としての内部監査の課題と、期待と現状のギャップを分析している。第3章では、内部監査が経営の価値創造プロセスにどのように貢献できるかを検討し、第4章では、内部監査の経営戦略への貢献を明らかにし、グローバルガイダンスへの適応やサステナビリティ経営への対応についても議論している。そして第5章では、内部監査のトランスフォーメーション(変革)について3段階のアプローチを提案し、進化に向けた方向性を模索している。さらに最終章(第6章)において、取締役会や経営陣が内部監査を活用するためのアクションプランを提示している。
ピックアップ
- 東北大学大学院・細田千尋准教授「脳科学から考える“令和の新しい経営者”とは」【新春インタビュー#13…
細田千尋:東北大学大学院准教授・認知科学 / 脳科学者 「Governance Q」新春インタビュー最終回の13回は、東北大学大学院准教授で…
- 日経弁護士ランキング首位、太田洋弁護士「今年は上場企業経営者が“極度の緊張”を強いられる年に」【新春…
太田 洋:弁護士(西村あさひ法律事務所パートナー) (前編から続く)日本経済新聞「弁護士ランキング」で3年連続首位(企業法務全般)となった西…
- 徳島県・後藤田正純知事「ガバナンス改革の先にある“うずしお”の県政へ」【新春インタビュー#10後編】…
後藤田正純:徳島県知事 (前編から続く)後藤田正純・徳島県知事の新春インタビュー後編。2023年5月の就任以来、県政のガバナンス改革を進める…
- 社長は“ハラスメントでクビ!”の筆頭候補である【野村彩弁護士の「ハラスメント」対策講座#1】…
野村 彩:弁護士(和田倉門法律事務所)、公認不正検査士(CFE) 職場の「心理的安全性」確保に企業が腐心する中、その安全性を脅かす天敵が「ハ…
- “大川原化工機事件”代理人・髙田剛弁護士「警察でも“内部不正告発”を止められない時代」【新春インタビ…
髙田 剛:和田倉門法律事務所代表パートナー弁護士 2025年正月4日放送の「NHKスペシャル」でも改めて注目を集めた大川原化工機事件。警視庁…
- 丸木強・ストラテジックキャピタル代表「2025年もアクティビストの“職業倫理”を全うする」【新春イン…
丸木 強:ストラテジックキャピタル代表 各界の“賢者”が自らのガバナンス論を語る本誌Governance Qの2025年新春連続インタビュー…