東証スタンダード上場で車載用電子部品が主力の日本抵抗器製作所(富山・南砺=なんと=市)は4月28日、連結子会社の元従業員による現金の私的流用について、社内調査委員会より調査報告書を受領したことを発表した。
今年2月、2024年12月期決算の過程で子会社、日本抵抗器大分製作所(宇佐市)の経理担当による不正行為が発覚したことを公表。この時点で、約6年間にわたって総額1億5000万円を超える現金が同社銀行口座から引き出され、帳簿には虚偽のデータを入力し、隠蔽していたことを確認していた。
以来、同社は3月にこの経理担当を懲戒解雇し刑事告訴する一方、「社内調査委員会」を設置して調査を進めてきた。調査委は森悦夫取締役を委員長に、社内は取締役、社長室室長、財務管理部長で委員を構成、そこに問題が発生した大分現地の中山知康弁護士、白岩勇治税理士が外部委員として加わっていた。
銀行印は「総務部長が保管」の内規だったが…
3頁からなる開示版報告書によると、着服は19年2月から24年12月までの間に行われ、結果、総額1億5770万円が私的流用されたという。着服に手を染めた元従業員は単独で経理業務を担当し、銀行印も内部統制上は総務部長が保管することになっていたものの、実際は当該従業員が保管していた。
なお、舞台となった日本抵抗器大分製作所では全従業員、本社他では管理職、経理関連担当を対象にアンケートを実施した結果、今回の着服事案に関し、協力者や組織的関与はなかったと判断したとしている。
そして、〈当該子会社の経理業務を当該元従業員が単独で行っていたことにあり、本来当該元従業員の上長である総務部長が決裁責任者として監視・監督を行うべきところ、当該元従業員への過度な信頼により、内部統制が機能していなかったことが原因〉と結論づけている。
日本抵抗器は今回の着服事案を受けて、管理職などを対象にコンプライアンス研修を実施したうえで、各種支払いについては電子的な承認手続きに切り替え、総務部長の承認後でないと支払いができないようプロセスを見直したり、支払方法を小切手や手形の振り出しから「でんさい」や銀行振り込みに順次変更したりするなどの対策を講じるという。
日本抵抗器は東証スタンダード上場とはいえ、本体で51人、連結でも300人超という企業(23年12月末現在)。一方、業績はというと、23年12月期の売上高は約71億円、営業利益1億円、純利益8400万円。今回の1億5770万円の私的流用のうち、5860万円については24年12月期の特別損失に計上する予定といい、延期していた同期決算は本日4月30日に発表する。
ちなみに、元従業員は着服したカネを何に使ったのか?
〈現在、警察による捜査中でありますので、本件により当該元従業員が得た金員の使途については、警察の捜査に委ねたいと思っております〉(調査報告書)という。
16:00【日本抵抗器製作所】社内調査委員会の調査結果および特別損失の計上に関するお知らせ
https://www2.jpx.co.jp/disc/69770/140120250428525997.pdf