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【2024年12月16日「適時開示ピックアップ」】人・夢・技術グループ、東京産業、日立、nmsHD

12月16日月曜日の東京株式市場は続落した。日経平均株価は前営業日から12円値下がりし、3万9457円で引けた。今週半ばの18日から日本銀行の金融政策決定会合が2日間開かれるため、積極的な取引を控える投資家が多く、低い水準で推移した。そんな16日の適時開示は280件。この中からコーポレートガバナンスやコンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ、周辺情報も交えてお送りする。

「人・夢・技術グループ」不適切会計が物理的にできないシステム構築へ

東証プライム上場で建設コンサルタントの人・夢・技術グループは、外注費の付け替えなど不適切会計処理に対する経営陣の処分と再発防止策を発表した。

永冶泰司社長と、実際の不適切な会計処理を行った子会社2社の社長は、月額報酬の30%を2カ月減額する。

再発防止策として、①日報付け替えの防止など不適切な会計処理が物理的に行えないシステム改善を図る、②同社から協力会社へ不適切な指示があった場合、速やかに内部通報窓口への通報を促すよう契約書に記載する――など具体的な事例も盛り込んでいる。

米国の犯罪学者ドナルド・R・クレッシーのいう「不正のトライアングル」理論からすると、①機会、②動機、③正当化のうち、システム改善によって、不正行為を可能・容易ならしめる機会を取り除く手法と言える。これでリスクマネジメントは達成できるのか。コーポレートガバナンスの再チェックも求められる。

【人・夢・技術グループ】不適切会計処理に関する再発防止策及び関係者の処分のお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241216539273.pdf

三菱系「東京産業」不適切会計発覚を受けて“改善報告書”を東証に提出

東証プライム上場で太陽光発電の請負などエネルギー事業に取り組む東京産業は、改善状況報告書を東証に提出したと発表した。

東京産業は、太陽光発電事業で長期未収金への対応が不十分だったり、多額の追加費用への対応が遅れたりして、不適切な会計処理が発覚。2022年3月期と23年3月期の有価証券報告書を訂正していた。

改善状況報告書では、全社員向けに、会計リテラシーとリスクマネジメントに関する研修を実施したことなどを説明。また、10月には監査室を1人増員して4人体制に強化したという。この1人は、広い分野で営業を担当し、さまざまな契約行為について経験があるという。

東京産業は「成果が着実に現れてきている」とコメントしている。なお、同社は三菱系企業の支援で1947(昭和22)年に機械専門商社として発足した経緯があり、現在も筆頭株主は三菱重工業(24年3月末現在、9.30%保有)だ。

【東京産業】東京証券取引所への「改善状況報告書」の提出に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241216539220.pdf

「日立」で社長交代、徳永新社長に問われるグローバル対応

東証プライムの日立製作所は、徳永俊昭副社長を社長に昇格する人事を発表した。小島啓二社長は副会長になる。いずれも2025年4月1日付。東原敏昭会長は留任する。

日立は、09年3月期に7873億円の当期損失を計上。ほぼ同時に子会社から呼び戻されて社長になった川村隆氏(東京電力ホールディングス元会長)が構造改革を断行、その後を継いだ中西宏明氏(元経団連会長、21年死去)はデジタル化戦略を打ち立てて社会問題の解決を事業の中心に据えた。

そして現会長の東原氏は事業の選択に取り組み、その後任の小島氏はデジタル事業を推し進めるなど4代の社長がそれぞれの役割を担ってきた経緯がある。

グローバル化が進む一方で、米国ではトランプ氏の大統領再選など、国際政治と経済は不透明さが増している。事実、日立も12名の取締役のうち、米ゼネラル・エレクトリック(GE)や同3M、同ダウ・ケミカル等で要職を務めたジョー・ハーラン氏や独シーメンス出身のヘルムート・ルートヴィッヒ氏など5名が外国人取締役(24年6月現在)だ。日立は世界で伍していけるのか、徳永氏の手腕が問われる。

【日立製作所】代表執行役 執行役社長兼 CEO の異動について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241215538563.pdf

「nmsHD」社長が知人女性と飲食など“経費不正”の報告書

日本やアジアで設計や組み立てなどを受託したり、請け負ったりする東証スタンダード上場のnmsホールディングス(HD、東京・新宿区)は、特別調査委員会の調査報告書を公表した。

調査対象は社長の小野文明氏で、経費の使用に関する調査が行われた。その結果、2017~24年に飲食代報告書記載の相手方との飲食がなかったと認められたケースが約130件あり、このうち27件は知人女性との飲食などとされた。

このほかタクシーチケットや社宅の利用状況なども調べ、交際費の精算手続で虚偽記載や公私混同などの問題があったとしている。そのうえで調査委員会は「いずれの問題も、代表取締役社長自身に、常識的なレベルのコンプライアンス意識や、公器である上場会社の代表取締役であるとの自覚があれば、到底起こり得ないことである」と指摘。

さらに「本件の主な原因は、小野氏の個人的な資質の問題が大きいと考える」と一部が聖域化されていたことを挙げ、再発防止のために小野氏の影響力を排除、あるいは減殺するため、経営体制の刷新も視野に入れた検討を求めている。

なお、1959年生まれの小野氏はテクノブレーンを経て、02年にnmsHDの前身である日本マニュファクチャリングサービス代表取締役に就任。かような経費不正が指摘されても、代表取締役社長を続けているわけだが、小野氏自身は23.41%の株式を保有する筆頭株主だ(24年3月末時点)。

トップの不正が指摘される上場企業に正常なコーポレートガバナンスが期待できるのか。今後の動きが注目される。

【nmsホールディングス】特別調査委員会の調査報告書公表に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241216538923.pdf

(平日連載、2024年12月17日公表分に続く)

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