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【2024年11月25日「適時開示ピックアップ」】大日本塗料、クシム、オークファン、リコー、トヨタ、日本特殊陶業、H.I.S

連休明けの11月25日月曜日の東京株式市場は続伸した。日経平均株価は前営業日から496円上昇し、3万8780円で引けた。米ダウ工業株の高値の流れを引き継いだ格好。そんな25日の適時開示は177件。この中からコーポレートガバナンスやコンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ、周辺情報も交えてお送りする。

「大日本塗料」JIS規格の逸脱で出荷を自粛

東証プライム上場で住宅用建材に強い大日本塗料は、製品やサービスの品質などを定めた国家規格のJIS(日本産業規格)に逸脱した行為があったとして、一部の製品について出荷を自粛すると発表した。

対象となった製品は、塗料を固めるための硬化剤の一種で、外注先が造っていた製品の中で、そもそもJISを申請していないのにJISマークを表示していたものがあったという。表示していない製品の準備ができた段階で出荷を再開する予定だ。

大日本塗料は昨年10月にも、JISマークに関する検査の改竄が見つかり、マークの表示を一時停止の通知を受けていた。今回の硬化剤のJISマークの不適切な表示も、再発防止活動の中で見つかった。

【大日本塗料】当社の一部 JIS 認証製品に係る出荷自粛についてhttps://www.release.tdnet.info/inbs/140120241125528940.pdf

暗号資産「クシム」会社情報漏洩で大株主取締役に辞任勧告

東証スタンダード上場で、ブロックチェーン技術を活用した暗号資産事業を展開するクシム(東京・港区)は、取締役の田原弘貴氏に対する辞任勧告を決議した。社内調査委員会も設置する。

クシムのリリースによると、田原氏は株主に対して重要な情報を漏洩させた疑いがあるという。田原氏から代表取締役の中川博貴会長に対し、東証スタンダード上場企業の社長A氏を紹介したいという話があり、意見交換会を実施したという。

この時、田原氏から未公表の会社情報の言及があり、A氏からも「重要事実」が共有されていると確定できる発言があったという。さらに、暗号資産に関連する事業で、マネーロンダリング(資金洗浄)の懸念が伴う提案もあり、クシム側は「国家の経済安全保障上のリスクにもつながり得るものと考えております」と指摘している。

また、クシムは 株主でもある田原氏から株主提案があったことを明らかにした。提案内容は、自分を含む4人を取締役に、2人を監査等委員兼取締役に選任することを求めている。来年1月の株主総会で審議される。

田原氏は1996年生まれの28歳、東京大学工学部卒業後の2019年にWeb3(ブロックチェーン技術等を活用した分散型インターネット)に特化したコンサルティング会社、チューリンガム(東京・港区)を設立、23年1月にクシム取締役に就任。同年10月末現在で、2.14%を保有する第3位株主。ちなみに、住所はアラブ首長国連邦となっている。

トランプ氏の米大統領再選で俄かに注目を集める暗号資産だが、同事業を展開する上場企業で発生した不可解な騒動。コーポレートガバナンスは元よりコンプライアンスの点からも気になる話ではある。

【クシム】取締役1名に対する辞任勧告の決議および社内調査委員会設置に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241125528886.pdf

「オークファン」本社を“埼玉の倉庫に移転せよ”の個人株主提案に反対

東証グロース上場でオークション情報などのインターネットサービスを提供するオークファンは、3件の株主提案について反対すると発表した。

提案は一人の個人株主から出され、本社を現在の東京・品川区から埼玉・三芳町の倉庫に移転することや、自社株買いの強化などを提案された。

オークファン側は本社移転について、「従業員の通勤環境が著しく悪くなる」などと指摘。また、自社株買いについても「巨額な提案で、適切な成長投資に影響を及ぼす」と説明している。

なお、株主提案を行ったのは発行株式数300個以上を6カ月以上保有する株主だが、会社側は個人株主のため、匿名でリリースしている。提案内容の適切性は置くとしても、ストックホルダーと向き合うガバナンスの在り方が問われる事案ではある。

【オークファン】定時株主総会の付議議案及び株主提案に関する当社取締役会意見に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241125528865.pdf

中国仲裁機関が「リコー」に移転補償金200億円の返還命じる

東証プライムのリコーは、中国の子会社の移転に関する保証金に絡み、中国・深圳の仲裁機関(深圳国際仲裁院)から判断を受け取ったと発表した。

リコーの子会社は2016年、地元の不動産デベロッパーと移転跡地の都市再開発をめぐる提携協議書を締結、補償金の一部を受け取った。さらに移転手続きの進行とともに補償金の残額を受け取る予定だったが、中国政府による不動産引き締め政策などで手続きが進まず、支払いが遅延した。

このためリコー側は、残額の支払いを求めて仲裁を提起したという。一方で、この地元の不動産デベロッパーも反訴した。

仲裁機関は、不動産デベロッパーの主張を認め、9.4億人民元(約200億円)をリコーの子会社に返還するよう命じた。リコーは受け入れる方針という。

その結果、リコーは海外のリーガル(法務)リスクを考えさせられる案件だ。

【リコー】当社の子会社が提起した仲裁申立の仲裁判断および通期業績予想の修正に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241122527883.pdf

認証不正「トヨタ」が再発防止に関する報告書を公表

東証プライムのトヨタ自動車は、車の大量生産に必要な「型式指定」での認証不正問題で、再発防止策の進捗状況を公表した。

社内の認証試験に立ち会い、実施状況や正確性を確認する「社内審査官」を配置したほか、デジタル技術を活用することで人為的なミスを防いで作業負担を軽減させた、などと説明している。

今年7月にトヨタは国土交通省からの是正命令を受け、11月25日に進捗状況を同省に報告した。トヨタによると、経営陣が現場に足を運び、設備の老朽化など必要な対応ができていなかったことが分かったという。

「中長期的に必要なことを経営で即断即決し、すべての従業員に実施事項を共有していきます」とコメントしている。

【トヨタ自動車】型式指定申請に関する再発防止 進捗報告について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241125528689.pdf

「日本特殊陶業」が東芝の素材会社を1500億円で買収

東証プライム上場でスパークプラグなどの自動車部品メーカー、日本特殊陶業は、東芝の完全子会社で、金属材料の東芝マテリアルを1500億円で買収すると発表した。

東芝マテリアルはEV(電気自動車)部品や半導体の素材で優れた技術を持っており、日本特殊陶業は完全子会社してシナジー効果を出していくという。来年5月までに買収手続きを終える予定だ。

譲渡する東芝(2023年12月非上場化)もこの日、「日本特殊陶業が、東芝マテリアルの持つポテンシャルを最大限に発揮できるリソースを有するベストパートナー」とのコメントを出した。

【日本特殊陶業】東芝マテリアル株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせhttps://www.release.tdnet.info/inbs/140120241125528582.pdf

「H.I.S」子会社が雇用助成金の不正受給の疑い

東証プライムで旅行大手のエイチ・アイ・エスは、子会社のナンバーワントラベル渋谷で雇用助成金の不正受給があった疑いで、東京労働局の調査を受けていることを明らかにした。期間は2020年4月から23年3月で、調査は現在も続いているが、ナンバーワントラベル渋谷の従業員は8人で、同期間で約1億円の雇用助成金を受けている。エイチ・アイ・エスは大手法律事務所のアンダーソン・毛利・友常に調査を依頼した。

また、これを受け、エイチ・アイ・エスは12月13日に予定していた24年10月期決算の発表を延期する。

【エイチ・アイ・エス】当社連結子会社における雇用調整助成金の受給に関する調査及び 2024 年 10 月期決算発表延期のお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241120526938.pdf

(平日連載、2024年11月26日公表分に続く)

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