【2024年11月19日「適時開示ピックアップ」】日清製粉、Laboro.AI、東テク、富士ソフト、東京海上、ID&E、モリト
11月19日の東京株式市場は反発した。日経平均株価の終値は、前日比193円高い3万8414円だった。前日、ハイテク株を中心とした米ナスダック市場の高値を受けた。そんな19日の適時開示は143件。この中からコーポレートガバナンスやコンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ、周辺情報も交えてお送りする。
「日清製粉」が大谷翔平選手を広告起用
東証プライムの日清製粉グループ本社は、連結子会社の日清製粉ウェルナがドジャースの大谷翔平選手との広告出演契約を結んだと発表した。
食事や栄養にこだわる大谷選手の姿勢と、安全・安心な製品を提供する日清製粉ウェルナの企業姿勢に「双方が共感した」と理由を説明している。日清製粉ウェルナはお好み焼き粉やミートソースなどを製造・販売している。
なお、ご丁寧にもというべきか、《今後の見通し》と題し、「本件が2025年3月期の業績に与える影響は軽微であると考えていますが、今後、開示すべき事象が生じた際は速やかに開示いたします」との一文が添えられている。
片や、日本取引所グループ(JPX)の《適時開示に関する実務要領》によると、〈上場会社が、当該上場会社の運営、業務若しくは財産又は当該上場株券等に関する重要な事項であって投資者の投資判断に影響を及ぼす事実についての決定を行い又はそのような事実が発生した場合、適時開示を行う必要がある場合があります〉とあるが、大谷選手の広告起用がこれに該当するのか、いささか疑問ではある。
【日清製粉グループ本社】子会社による大谷翔平さんとの広告出演契約締結について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241118525763.pdf
AI開発「Laboro.AI」新規上場・事業拡大で監査人の交代
東証グロース上場で、顧客に合わせたAI(人工知能)開発で知られるLaboro.AI(ラボロAI、東京・銀座)は、監査法人の交代を発表した。
有限責任大有監査法人(所属公認会計士は11人)から、PwC Japan有限責任監査法人(同196人)に今年12月25日の株主総会で決める。Laboro.AIは2023年7月の新規上場で、「今後の事業拡大に当たり、より広範な監査が必要である」と説明している。
【Laboro.AI】公認会計士等の異動に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241119526270.pdf
「東テク」政策保有株の削減で株式売却を公表
東証プライムで空調や電気設備の導入サービスの東テクは、自社株式が金融機関から売り出されることになったと発表した。
売却される東テク株は274万株で、売出人は同社株式を政策保有する三井住友銀行の159万株、三菱UFJ銀行が69万株、りそな銀行が25万株、池田泉州銀行は19万株となっている。東テクによると、売り出しは政策保有株式を減らすことが目的で、同社の株を持っている金融機関と話し合ったうえで決定したという。
【東テク】株式の売出しに関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241119526237.pdf
KKRによる「富士ソフト」のTOBスタート
東証プライムでIT企業の富士ソフトは、米投資ファンドのKKRによる株式公開買い付け(TOB)が11月20日から始まると発表した。2回目のTOB。1株9451円で12月19日まで買い付ける。
米投資ファンドのベインキャピタルと争奪戦になったが、KKRはベインよりも1円高い金額を提示。富士ソフトもKKRに賛同、ベインに反対を表明した。
【富士ソフト】FK 株式会社による 富士ソフト株式会社(証券コード:9749)に対する 公開買付けの開始に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241119526462.pdf
東京海上が災害対応で建設コンサル「ID&E」をTOB
東証プライムの東京海上ホールディングス(HD)は、同じく東証プライム上場で建設コンサルタントのID&E ホールディングス(HD)のTOBを実施する。
ID&EHDは完全子会社となり、上場廃止となる見通し。東京海上はTOBの目的として「災害レジリエンスの向上」などを挙げ、ID&Eのコンサルタント技術を生かし、災害からの復興や環境を配慮した都市づくりなどの事業に取り組む。保険事業にも生かしていく考えだ。
【東京海上ホールディングス】ID&E ホールディングス株式会社株式(証券コード:9161)に対する 公開買付けの開始に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241118525911.pdf
「モリト」上場35周年でクオカード500円
東証プライムで服飾付属品、生活関連資材のモリト(大阪市)は上場35周年を記念して株主にクオカードを進呈すると発表した。今年11月30日時点で100株以上持っている株主1人に500円分のクオカード1枚を配る。
同社は1908(明治41)年の創業で、1989年7月14日の上場(大阪証券取引所2部=当時)。ちなみに、昨年11月末時点の株主数は1万5242。単純計算でクオカードの総額は762万1000円也。筆頭株主はクラレで、232万株余(8.57%)を保有するが、リリースを額面通り読む限り、クラレにも500円のクオカード1枚を進呈するということだろうか。
このリリースの影響があるのか、11月19日の終値は1444円だったが、20日11時半現在、1522円を付けている。
【モリト】上場35周年記念品進呈のお知らせhttps://www.release.tdnet.info/inbs/140120241119526308.pdf
(平日連載、2024年11月20日公表分に続く)
関連記事
ピックアップ
- 【2024年11月20日「適時開示ピックアップ」】ストレージ王、日本製麻、コロプラ、GFA、KADO…
11月20日の東京株式市場は反落した。日経平均株価は売り買いが交錯し、前日から62円下落した3万8352円で引けた。そんな20日の適時開示は…
- 安藤百福「素人だから飛躍できる」の巻【こんなとこにもガバナンス!#36】…
栗下直也:コラムニスト「こんなとこにもガバナンス!」とは(連載概要ページ) 「素人だから飛躍できる」安藤百福(あんどう・ももふく、実業家) …
- 【《週刊》世界のガバナンス・ニュース#2】米エヌビディア、豪レゾリュート・マイニング、加バリック・ゴ…
組閣人事報道も相次ぎ、世界がトランプ米大統領の再来前夜に揺れ動く中、世界では、どんなコーポレートガバナンスやサステナビリティ、リスクマネジメ…
- 鳥の目・虫の目・魚の目から見る「公益通者保護法」の再改正【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#5】…
遠藤元一:弁護士(東京霞ヶ関法律事務所) 内部通報者への「不利益処分に刑事罰」構想の実効性は? 公益通報者に対して公益通報者保護法が禁止する…
- 【米国「フロードスター」列伝#1】「カリブ海豪華フェス」不正実行者の所業と弁明…
さる2024年9月、テレビ朝日系バラエティー番組『しくじり先生 俺みたいになるな‼』に、見慣れぬアメリカ人が登場した。その名は、ビリー・マク…
- 「日本ガバナンス研究学会」企業献金から大学・兵庫県知事問題までを徹底討論《年次大会記後編》…
(前編からつづく)ガバナンス弁護士の泰斗として知られる久保利英明氏が会長を務める日本ガバナンス研究学会。その年次大会が10月5日、大阪・茨木…