クレジット不正請求被害者が暴いた真実、ミンコウ逮捕へ
87年4月半ば、飛ぶ鳥を落とす勢いのミンコウは、競合企業の「キーサーブ」の買収計画を発表する。キーサーブは米大手小売りグループ、シアーズ公認のカーペットクリーニング業者で、年間8000万ドルの収益を上げていた。このM&Aにより、ZZZZベストはローンや投資家への返済に充てる資金を得るつもりであったという。
同年5月初旬には、キーサーブの従業員約数百人を本拠地カリフォルニアまで呼び寄せ、経営統合会議を開催。買収まであと少しだった。
しかし、ミンコウの野望はある女性の出現により打ち砕かれ、不正ビジネスは破滅へと向かっていく。
競合企業買収計画から少しさかのぼること1年数カ月前の86年1月、とある女性客が、花屋でクレジットカードショッピングをしたところ、不正請求されたことが発端だった。
その女性客の買い物額は本来23.95ドルだったところ601.11ドル(現在では1600ドル相当)も過大請求されたのだ。彼女は慌てて花屋に連絡したところ、その店のオーナーというミンコウに転送された。彼は返金の口約束をするも、一向に金は返されない。そこで、彼女は独自の調査を粘り強く行う。
買い物から8カ月後の86年9月、彼女は「少額請求裁判所」に提訴する。彼女の夫が、その関連書類を直接ミンコウのオフィスに届けに行くと、ミンコウと仲間のチンピラに脅され、眼鏡を壊される。
その年の11月、彼女は地元紙『ロサンゼルス・タイムズ』の記者に手紙と資料を送った。すぐに反応は来なかったものの、翌87年春、その記者がようやく彼女の郵送物を見つけ、取材に乗り出した。
そして、同年5月、キーサーブの買収前夜、ロサンゼルス・タイムズは、ミンコウのかつての不正請求と被害者への返済拒否、そしてクレジットカード詐欺についての記事を掲載した。
その記事が掲載されると同時に、捜査機関も動き出し、会社の帳簿や取引記録を徹底的に調査した結果、ミンコウの不正の数々がドミノ倒しのように露見する。記事の掲載日、ZZZZベストの株価は約25%も下落。キーサーブ買収の仲介人は6月1日に撤退し、翌日には監査法人のアーンスト&ウィニーも続いた。
ミンコウは7月2日にCEO(最高経営責任者)を辞任し、一時は18ドルを付けたZZZZベストの株価は0.75ドルに急落。7月8日には破産を申請し、ミンコウ個人も8月に破産宣告をした。
会社の資産の大半が架空のものであることが判明したのはIPOからわずか7カ月。投資家と貸し手に1億ドルもの損害を与え、かつては3億ドルを超える評価額だったその資産はわずか約6万4000ドルで競売にかけられたのだった。