葛藤と歪んだ責任感
前述の通り、リヴォルシーの父親や義理の兄弟もファンドに多額の資金を投入していたため、妻のファンドが破綻すれば、家族全体が大きな損害を被ることは必定。彼自身にも会計の知識と経験があるという自負もあってか、家族を守るためとの大義から、彼自身も妻の“ポンジスキーム・ファンド”の運用に加わり、資金不足を解消する手助けをしようと考える。
2007年には、新たな大口投資家から500万ドル(約5億8000万円)の出資があったが、この資金もすべて既存の投資家への返済に充てられ、ファンドの運用自体には一切使われることはなかった。
この大口出資を受けて、リヴォルシーは「これですべてが解決する」と考えたというが、これは問題の先送りに過ぎない。後に彼は自身が愚かだったと認めたように、新規投資家の資金を既存投資家に送ることは違法行為であると十分に認識していなかったのだ。
加えて、リヴォルシーは家族との関係にも悩むようになる。さすがに妻のヘッジファンドビジネスに対する疑念も深まる一方、親族も多額の投資しているため、彼らに対してこの実態なきファンド投資に巻き込んでしまったことに責任感を重く抱いていた。
「自分がもっと早く現実を直視していれば、家族や自分自身を守ることができたかもしれない」
彼はこの時期を振り返り、「家族を守るための判断が、結果として全てを悪化させてしまった」と述懐する。家族に対する責任感が逆に彼の判断を鈍らせたのか。必ずどこかの段階で破綻するポンジスキームの泥沼に、彼は陥ってしまった。
転落の瞬間…FBI捜査と逮捕
2007年、ついにFBIがリヴォルシーの自宅を訪れ、妻リンダを逮捕した。投資家からの苦情や民事訴訟により、FBIがこのファンドの調査を開始したのだった。この時点で、リヴォルシー夫妻は逃げ場のない状況に追い込まれる。
後に公表されたFBIの調査資料によると、ファンドには一切の活動記録がなく、取引が行われた形跡も見当たらないことが確認されている。さらに、妻リンダの経歴詐称も明らかになった。メリルリンチやモルガン・スタンレーでの雇用歴もなく、そもそも、オクラホマ大学卒もウソであった。これにはさすがのリヴォルシーも驚いたという。
妻の逮捕後、彼自身も逮捕される。FBIの捜査は数年間に及び、ポンジスキーム・ファンドの運用実態が次々と明らかにされた。投資家たちが失った金額は総額650万ドルと判明し、最終的には刑事訴追が行われることとなった。
捜査が進む中で、彼は自らの行動が家族や他の投資家に与えた影響に気づき、自責の念に駆られた。しかし、この時点ではすでに手遅れであった。リヴォルシーは法廷で自らの罪を認め、刑務所で2年の服役と約500万ドル(約5億8000万円)の賠償金を科せられた。