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【米国「フロードスター」列伝#3】偽ファンドマネージャー妻の片棒を担いだ不正共犯“主夫”の決断

ファンドマネージャー妻とポンジスキーム

ところで、妻のリンダは中西部の名門オクラホマ大学卒で、メリルリンチやモルガン・スタンレーでの職務歴もあるというヘッジファンドマネージャーであった。この輝かしい妻の経歴も相まって、リヴォルシーは彼女の運用するファンドについても信頼できる健全な投資先と見なしていた。妻を支援する目的もあり、自らの資金はもちろん、さらには自分の父親や兄弟にも投資を勧めたのだった。

しかし、リヴォルシーはここで重大な過ちを犯していた。

ヘッジファンドに投資するとなると、高額な資金が必要になり、その額はアメリカでは一般的に数千万円から数億円が必要とされる。このような高額なヘッジファンドへの投資は、その運用実績や方針、そして運用者であるヘッジファンドマネージャー自身を調査するデューディリジェンスを実施しておくことでリスクを軽減することが肝要。しかし、妻を愛するリヴォルシーは、彼女を無条件に信用し、その手の調査をまったく行わなかったのだ。

そして実際のところ、妻のヘッジファンドは運用の実態がなく、新規投資家から得た資金を既存投資家への配当に充てていたに過ぎなかったのだ。これは、典型的な「ポンジスキーム」である。

ポンジスキームとは、1910~20年代にアメリカで活動した詐欺師、チャールズ・ポンジにその名を由来する詐欺手法である。新規投資家から集めた資金を既存投資家への配当金や元本返済に充てるものだが、日本でも同様の構造を持つ詐欺事件が発生しており、特に2020年のジャパンライフ事件はその代表例だろう。

ジャパンライフ事件とは、磁気治療器など高額商品を販売し、購入者が知人などにレンタルすると利益が得られるという「レンタルオーナー商法」により主に高齢者から2100億円以上の資金を集めるも、出資者には配当金も、債務超過の事実を伝えることもなく、経営破綻に至った詐欺事件である。この構造は、リンダが取っていたファンドの運用方法とほぼ同一である。

父と同じ会計の道を歩み名門銀行、そして広告業界へ …
葛藤と歪んだ責任感 前述の通り、リヴォルシーの…
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