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【わが社の内部通報#2】東芝ライフスタイル「内部通報」は社員エンゲージメント向上にもつながる前向きな取り組み

重要なのは経営トップ自ら「内部通報の意義」を語ること

社員に対する周知については社内掲示板で内部通報窓口について告知をしているほか、白戸健嗣社長自らが外部窓口の新設を発表したという。

東芝ライフスタイルでは月に1回、国内のグループ会社および各営業所や補修部門の拠点の社員に対してタウンホールミーティング(対話集会)を開催している。そこで社長が経営の概況やメッセージを共有するのだが、昨年9月のタウンホールミーティングでは、従来からのリスク相談ホットラインとグループハラスメント相談メールに加え、DQヘルプラインを導入したことを直接社員に伝え「何かあれば使ってほしい」という旨のメッセージを発信したという。

外部窓口の周知徹底を目指したという松浦氏は、社長のメッセージについて、その狙いをこう話す。

「社内掲示板などでの告知もさることながら、重要なのは経営トップが内部通報に真剣に向き合っている姿勢を伝えることです。『社員の安心・安全のため』に新たな窓口を導入したことを示すことで、各組織長にもしっかりと内部通報について理解してもらう。その結果、制度そのものへの信頼性が高まるものと考えています」

こうした東芝ライフスタイルの取り組みの根底にあるのが、「不正防止のためには、経営陣が会社の状況を正確に把握していることが不可欠」という意識だ。経営陣の「不正はない」という認識が、「本当に不正がない」のか、「報告が上がっていない」からなのか、内部監査では各部署に「報告とモニタリングは行っているか」を常にヒアリングしているという。

野々山氏は「特に日本では『何もなければ報告しない』という傾向があります。我々、内部監査部門は、単に『不正や不祥事がないこと』を確認するだけでなく、なぜ不正や不祥事がないと言えるのかという“根拠”を求め、『ないことの証明』を徹底しています」と話す。

一方で松浦氏は、「人事総務部門ではハラスメント対策を企業の成長に不可欠なものとして捉えている」と説明する。DQヘルプライン導入前には、相談者が相当悩んだうえでメールを送ってくるケースもあったという。会社としても、「(加害者に対して)懲戒か否か」というような瀬戸際の判断を迫られることもあり、そのような事態は「相談者にとっても、相手にとっても、そして会社にとっても不幸な結果になりかねない」(松浦氏)。

ハラスメントをはじめ、不正や不祥事は芽の小さいうちに摘んだ方がいいのは誰しもが認識していることだ。「少し気になるけれど、会社に直接相談するほどのことか分からない。ただ、外部窓口だからメールで一報が入れられる」という心理的安全性は、「DQヘルプラインを導入した利点のひとつ」と松浦氏は言う。

“社員の健康”を阻害する要因を未然に防ぐ
「エンゲージメントアクションプラン」という取り組み

また、東芝ライフスタイルでは今年から人事総務部主導で、全社を挙げて社員のエンゲージメント向上に取り組む「エンゲージメントアクション」という活動を始めた。具体的には、各組織・各領域を飛び越えて様々な年代、性別、国籍を持つ社員がチームを組み、それぞれの職場の雰囲気やマネジメント、さらには会社の在り方などについて多様な視点から議論するという。そこには人事総務部のメンバーも参画、社員が考えていることをキャッチアップし、働く上での阻害要因を解決していく。

「この取り組みを始めた結果、社員が何を考えているのか、何に対して不満や不安があるのか、少しずつですが、より分かってきました。我々もディスカッションに加わることで、現場の空気感や温度が見えるので、『これはさらにヒアリングする必要がある話だな』とか『アプローチの仕方を変えたら改善するかな、やってみようかな』といったトラブルの未然防止につながっています」(松浦氏)

さらに、「組織やチームがより良い成果を生む環境をつくるには、社員が心身ともに健康であることが第一です。そのためには、世代間ギャップや上司部下といった上下関係、男女の性差や国籍の違いなどについて、お互いが理解して歩み寄ることが必要。また“相手の視点”で考えることでコミュニケーションが上手く行き、成果も出やすくなる」と松浦氏は話す。

全国にある関連企業の人事総務セクションも同様に、それぞれの組織・領域のエンゲージメントの調査結果をもとにプロジェクトメンバーを立ち上げ、現場で起きている実態を把握し、グループ全体でより良い方向に進むよう施策を練るという。

それは、コーポレートガバナンスについて、全社員が意識を傾けることでもある。

「ガバナンスとは何か? なぜガバナンスが必要なのか? ということを社員に理解してもらうためにeラーニングを使って学ぶ機会を設けています。ガバナンスが大航海時代にまで遡れるといった歴史的背景も紐解き、『自分』が企業経営者だったら、個人事業主だったら、という『自分だったらどうするか』と『自分事』に置き換えて、ガバナンスや内部統制といったものの必要性を理解してもらう取り組みも行っています」

野々山氏がこう話すように、東芝ライフスタイルはまさに「鳥の目・虫の目」で不正や不祥事を起こさないよう努力を重ねているという。

このように、同社は「内部通報」は企業の持続的な成長に不可欠であると考え、今後も通報を受ける側のスキルアップや、他社の取り組み事例の共有、DQヘルプラインの活用を通じて、より実効性の高い制度運用を目指していく考えだ。

 (取材・構成=編集部)