「社外役員」だからこそ果たせる不正調査での役割
一方、私はこれまで社外取締役(監査等委員)、社外監査役といった社外役員を務めた経験があります。また、社外役員を務める企業で発生した情報管理をめぐる問題事案について、社外役員のポジションのまま調査委の委員を務めた経験もあります。
まず、社外役員の日常業務について言うと、基本、その企業が「上場企業における不祥事予防のプリンシプル」(東証策定)に基づいてきちんと動いているかどうかをチェックすることです。
ところが、そうした細心の注意を払っていても、不正が発生してしまうことがあります。その場合は、調査委の組成に当たって、委員が公正に選定されているか、調査のスコープは不当に狭めずに必要な範囲で設定されているか、そういったことを一つ一つチェックするのが大きな役割です。
そうは言っても、社外役員でありながら、調査委に入ることの難しさはやはりあると思います。従業員が何らかの不正行為を行っていたとしても、必ずしも、その従業員だけの問題にとどまるとは限りません。組織風土に問題があったり、場合によっては上層部ぐるみだったり、という可能性も否定できないのです。
こうした場合、特に経営陣と調査委は潜在的に対立構造になりがちで、そうなったときは、調査委委員を務める社外役員が、調査の意義をしっかりと経営陣に理解してもらうようコミュニケーションをとるしかない。例えば、調査期間を延長しなければならない場合、調査委委員としての言葉だけで経営陣に接すると、「必要以上の費用をかけて、何も知らない第三者が何を言うか!」といった反発を招きかねません。
普段から経営陣と距離を保ったうえでの信頼関係が築けていれば、社外役員は、会社にとって不正調査がどのように企業価値の回復や向上に役立つのかということを説明できる唯一の存在になり得ます。そういう意味で、社外役員は不正調査を円滑に進めるうえでも非常に重要な役割を担っていると言えるでしょう。
さらに重要なのが不正調査後の役割です。調査委の外部委員は調査が終われば会社を離れます。調査が終わって以降も再生プロジェクトにきちんと向き合って、プロジェクトの遂行を見守ることができるのは、これまた社外役員しかいないのです。