【第三者委員会5箇条】
(1)設置の意義
(2)委員の選任
(3)社外役員の役割
(4)委員会の使命
(5)報酬等の適時の開示
(3)第三者委設置を主導すべきは「社外役員」である
前編では上記の(1)と(2)について解説したが、後編では(3)社外役員の役割から説明したい。これは、第三者委員会の委員は誰が選ぶのが一番良いのか、という問題と密接に関係している。
大半のケースで第三者委委員の選任プロセスは明らかにされていないが、委員会の設置に際しては、ほとんどが執行の最高責任者である経営トップが設置の是非はもちろん、委員の選任を最終決定しているはずだ。というのも、委嘱状を出すのは会社そのものだからである。
ところで、経営者が委嘱状を出したとして、逆にその経営者が絡んでいるような不祥事だったらどうなるのか。本質的に、会社と第三者委は利益相反の関係にあり、そのことが表面化する場合もある。そうした状況からして、委員の選定については、業務執行に関わっていない社外役員がイニシアチブを取るべきと言える。
そもそも、社外役員は株主総会において株主から選ばれており、独立した立場で執行サイドを監視・監督するのが仕事。一方、日々の執行は経営陣が担っている以上、社外役員の存在意義は会社の“有事”においてほかはない。ゆえに、第三者委の設置、そして委員選任についても、社外役員が率先して関わるべきなのだ。
そのプロセスでは、当然ながら、業務執行に関わっているCEO(最高経営責任者)をはじめとする経営陣から影響を受けない形で委員を選任できるはずであるし、調査が始まってからの第三者委とのやり取り、そして最後の調査報告書公表までを社外役員が主導すべきである。
ただ、この手の重責を担うには1人や2人では心許ない。最低3名の社外取締役が必要になろう。あるいは、監査役設置会社では非常勤監査役でも構わない。つまり、社外の目線から、第三者委の実効性をきちんと担保することが必要なのである。
しかし私が知る限り、第三者委の活動に関して組成から報告書公表に到るまで率先して社外役員が関与した事例は、皆無とまでは言わないものの、ほとんどないのが実情だろう。事実、フジテレビでも親会社のフジ・メディア・ホールディングス(フジHD)の社外取締役らが社内役員をリードした形跡はなかった。
こうした事情ゆえ、社外役員は「経営者のお友だち」と軽んじられるわけだが、第三者委の設置は、その企業にとっての有事にほかならない。有事に役に立たない社外役員に存在意義があるのか。第三者委はこうした社外役員の問題も浮き彫りにするのである。