「何を問われているのか」を見誤った創業家
(#6から続く)アクティビストファンドのオアシス・マネジメントの攻勢でフジテックを追放された創業家3代目の元社長、内山高一は、自身が行った株主提案で徹底してオアシスを糾弾する情報戦を仕掛けた。
主な焦点は自身の疑惑の払拭だった。トップ営業用の貴賓施設に創業家が居住していると問題視された東京・元麻布の高級マンションの賃貸・売買契約をはじめ、フジテックと創業家の取引について、事細かく説明した。
また、フジテックが立ち上げた関連当事者取引を調査する第三者委員会への協力がなかったとの批判に対して内山は、〈本件、第三者委員会がフジテックに対して要請した資料請求リストは約60頁、約350項目に及ぶものとなり、そのうち、約98%(資料数として約600個)を提出〉していたと否定した(内山側のキャンペーンサイト「FREE FUJITEC」より)。
そして返す刀で、内山はオアシスの関連当事者取引の疑惑追及について、〈印象操作を目的とした「虚偽情報の拡散」〉とオアシスを非難したのだった。
しかし、オアシスの情報戦に対する内山の反論は、ほとんど効果がなく、天王山の今年2023年6月の定時株主総会で敗れ去った。
内山はなぜ株主の信頼を回復できなかったのか。内山がとった戦略は、かつてわが国が情報戦で犯した過ちに似ていた。