コスモHDvs.旧村上ファンド#2「議決権行使助言会社」が反対するコスモのMOM決議【株主総会2023】
買収防衛策導入の是非は「株主の意思確認」に過ぎない
そもそも、なぜ、株主平等の原則に反するようなMOMという手法自体が可能となるのか。それは、株主総会における買収防衛策の決議は法的な決議ではないとされているからに他ならない。M&A(企業の合併・買収)に詳しい前出の法曹関係者によると、
「『株主意思確認総会』と言われますが、株主にどちらがいいかを投票してもらう勧告的決議と呼ばれるものであって、法的な決議ではありません。確かに、MOMは1株1議決権の原則からすると、株主平等原則に反しているように見えますが、あくまでも株主の“意思確認”なので許される。買収者以外の他の株主の意思がどうなっているのかを確認するだけだとされているのです。つまり、買収防衛策の導入をどうするかどうかという決議は、いわばアンケートみたいなもの。株主はどっちがいいと思っているのか、あくまでも株主の意思を確認するためのものであって、法的な議決ではないから、MOMでも可能、そういう考え方なのです」
株主意思確認総会とは、会社法で定められた株主総会の決議事項ではないが、株主総会における議案として株主の意思確認を行う場合の決議で、「勧告的決議」とも呼ばれる。通常は株主総会の決議に何か手続き的に瑕疵が推認できたり、違法の疑いがあったりすると、取り消しの訴えの対象になるが、株主意思確認総会は取り消しの訴えが出来ない。単なるアンケートのようなものだから、取り消しの対象にならないというのだ。
MOMは、買収防衛策自体を決議するというよりは、株主の意思を確認するというプロセスの一環という捉え方だ。まずは株主の意思を確認して、仮に買収防衛策導入に対して大半の株主がイエスと賛成した場合、次に大量買い付けが行われたときは取締役会の決議で防衛策を発動するという建て付け。会社側としては、こういう株主意思が確認されたのだから、我々経営陣の判断は合理的だと主張できる。買収防衛策を発動して、特定の株主の権利を侵害することになったとしても、それには合理性があるというわけだ。
議決権行使助言会社2社も「コスモHD」の防衛策にNO
仮にコスモHDのMOMによって買収防衛策導入が承認された場合、今後の焦点はシティ側がどう動くかだ。
「買収防衛策導入の是非を今回の6月22日の株主総会で問うわけですが、仮に可決されても、実際に発動するのは、防衛策の中で決められた20%以上の買い増し行為をシティが実施し始めた後になります。具体的には、MOMであっても株主総会で買収防衛策が可決されたにもかかわらず、シティが更なる買い増し行為を行ったとコスモが認めた場合には、コスモ取締役会が買収防衛策発動の決議を行い、これに対してシティが差止めの仮処分を行うことが予想されます。コスモの買収防衛策が可決された場合にシティがどのように動くかが注目されるでしょう」(企業法務に詳しい法曹関係者)
一方で、市場関係者の間では早くも日本の株式市場の先行きを懸念する声も出始めている。
「仮にMOMでコスモHDの買収防衛策が可決された場合、それが先例になってしまう可能性が高くなります。発行体企業側の意思によってMOMが当たり前に行われるようになると、ファンドをはじめ、海外投資家は日本株を敬遠するようになりはしないか。経営陣から敵視されると、『あなたたちを排除して決議する』、『MOMで過半数を確保したので、もうこれ以上、ウチの会社の株式は買わないでください』というようなことをある意味、自由に出来るようになってしまうのです。それが果たして日本マーケットのためになるのか」(前出の市場関係者)
コスモHDが今回の定時株主総会で決議する買収防衛策の発動について、米議決権行使助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)とグラスルイスは「反対推奨」している。一方で、コスモHDの山田茂社長は経済誌のインタビューでこう語っている。
「彼ら(シティ)が20%以上株を持つということは、経営に対する責任も一定程度生まれてくる。われわれが言っていることと村上さん側が言っていることと、どちらがコスモHDの企業価値を拡大できるかを株主の方々に判断していただきたい」
MOMで正しい株主の判断を示すことは出来るのか。その手法に疑問は尽きないが、決戦はいよいよ2日後の6月22日。コスモHDの“一般株主”の判断やいかに――。
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