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JAL・ANAが現役社長解任「空港施設」国交省忖度の原点#1【株主総会2023】

株式上場の動機は「年商10倍」の投資資金調達

国際航業からの空港施設賃貸事業の分離もまた国の方針に従ったものだった。実務レベルの準備はJAL、ANAとの3社協議で進め、分社化当時の株主構成はJAL、ANA、国際航業が3割ずつ、残り1割が大和銀行(現りそな銀行)だったという。ただし、国際航業は2007年に保有株の大半を政策投資銀行に譲渡、現在は政策投資銀行がJAL、ANAに続く第3位株主である。

結果、JAL、ANAから送り込まれる取締役の人数は2人ずつ。トップの椅子は設立時から旧運輸省(現国交省)の天下りの指定席で、初代社長の林担氏から7代目の甲斐正彰氏まで、50年間一貫して旧運輸官僚が占めてきた。

資本こそ民間だが、生まれも育ちも国策会社である空港施設が、株式市場への上場を目指した目的は、ほかでもない証券市場からの資金調達だった。羽田空港の需要は増加の一途を辿ったことから、1981年、当時の運輸省は羽田沖合への空港拡張計画(通称「沖展事業」)を打ち出す。

生い立ちはどうであれ、一民間企業に過ぎない同社は沖展事業に沿った設備投資が出来なければ存続が危うくなる。そこで年商90億円の会社が900億円もの資金調達をする手段として、株式市場への上場という話になったらしい。当初は1989年内に「東証2部上場」という目標を掲げていたものの、時あたかも、バブル経済。1986年から翌年にかけ、国際航業が仕手集団「光進」による株買い占め騒動に見舞われ、当時の国際航業幹部が乗っ取り防止工作資金を会社に無断で捻出、業務上横領容疑で起訴される事態に発展した。

このため、2部上場を断念して店頭公開に方針を転換。1991年12月の公開を目指すも、今度はバブル崩壊で市況が悪化。1年4カ月遅れて1993年4月に店頭公開を果たし、1995年12月に東証2部に上場、1997年9月に1部に昇格している。

公募増資で調達した金額は公開時点で27億円、2部上場時に54億円の計81億円でしかないが、上場による信用力向上で借り入れがしやすくなった効果は絶大だったようだ。1991年3月末時点で98億円だった負債合計は1994年3月末時点では780億円に急増、それとバランスするように135億円だった有形固定資産の残高も750億円に膨らんでいる。さらに1991年3月期に94億円だった年商も、1993年9月の沖合移転と1994年9月の関西空港開港が奏効、1996年3月期には296億円へと3倍に増えた。

前出の『空港施設50年史』によれば、日本開発銀行(当時、日本政策投資銀行の前身)が事業に理解を示したことに加え、市中銀行も上場予定ということで前向きに対応してくれたとの記載がある。金利面での優遇もあったようで、株式上場していなかったら、金利負担はより大きくなっていたはずだという。

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