フジテック#1「追放創業家」が選んだ“最悪の選択”【株主総会2023】

創業家が目指した「着実な経営」

オアシスのフジテックへの関与は当初から攻撃的なものだった。3年前の2020年にはキャンペーンサイトに声明を発表した。

「フジテックは世界最大手のエレベーター・エスカレーターを製造企業の一つです。しかし、同社株式は他の海外の競合他社のバリュエーションの平均値の、1/3以下の水準で取引されています。弊社の分析によると、経営陣の独善的姿勢、非効率な資本配分政策及び業務オペレーション、不十分なカバナンスが、バリュエーション上の乖離をもたらす原因と考えています」(当時、以下同)

そして、諸悪の根源を内山高一はじめ、創業家に求めた。

「内山家はフジテック株のわずか5.6%しか有していないにもかかわらず、内山家以外の株主をあまり考慮せず、フジテックの潜在的可能性を引き出すビジョンもないままに経営されています。すべての少数株主が、フジテック経営陣に対して、抜本的な改革を求め、すべての株主の利益のためにガバナンスを改善し、足許の低迷からの脱却を目指すべきであると主張すべき時が来ました」

オアシスのターゲットは、当初からフジテックを実効支配する創業家であり、その大義名分は「ガバナンスの改善」だった。

この年、オアシスはフジテックが保有し続けていた900万株の自己株式、いわゆる金庫株の消却を求めている。自己株式を消却することで株式の総数が減少するため、株価の上昇が見込まれる。しかし、社長(当時)の内山率いるフジテックは、オアシスの株主提案に反対。「将来的な資金調達やM&A等、機動的な資本政策の活用を議論する」必要性を訴えた。

株主総会では、オアシスの提案は否決された。

だからと言って、当時のフジテックがアクティビストを全面的に無視していたとは言い難い。フジテックは、オアシスの株主提案以降、自己株主の償却や自社株買いを独自に進め、ファンドの意向も考慮する動きを強めていった。

フジテックの内山家のように、議決権の半数以上の株式を持たずに支配株主ではない創業家が、今も経営権を握り実体的に会社を支配している例は、日本では半ば常態化しているものの、世界から見れば、異例かつ非常識に映る。しかし、一般論として、持ち株を数パーセントしか保有しない創業家トップは、その他の株主の意向を軽々しくは扱えない。軽視していては、いつでもクビにされてしまうからだ。内山は、オアシスとも対話を重ね、自身の事業方針を丹念に説明し、理解を求めてきた――少なくとも、内山本人はそう考えていた。

フジテックは、独立系専業メーカーでありながら、日立や三菱など財閥系メーカーと互角に渡り合い、世界有数のエレベーター企業に成長した。この要因は、創業家独特のロイヤリティを持つ内山が、トップセールスで信頼関係を築いてきたことが大きかった。トップの迅速な決断につき従う世界1万人の従業員との一体感が、収益拡大に貢献する原動力だった。

部品などの納入業者との結束も強かった。コロナ禍の停滞期にも利益を度外視して仕事を発注することで、パートナー企業が他メーカーに流れるのを防ぎ、強靭なサプライチェーンを構築していた。潤沢なキャッシュや内部留保は、特に不況期でも取引網を維持する大切な経営資源であり、成長の源泉となる信頼維持に欠かせない機能を果たしていた。

こうした‟創業家・内山社長”への国内外の信用は、確かに何物にも代えがたかった。

しかし、そもそも業界再編が選択肢にあるアクティビスト・ファンドにとっては、フジテック単独での生き残りや内山の信用力は、大した問題ではなかった。高値売り抜けを目指すオアシスにしてみれば、内山家の存在が障害と映ったことだろう。

コロナ禍の行動規制が緩和の兆しを見せた2022年5月、オアシスは徹底した“内山攻撃”に打って出た。