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【ブラジル弁護士特別寄稿】ブラジル進出日本企業のリスク:2025年米国FCPA改正の影響

もう一つの重要な点は、ブラジルと米国における焦点の違いです。米国の新ガイドラインでは、贈答や接待が重大な汚職を構成することは稀であるとし、こうした行為への重点は減らされています。しかしブラジルでは、反汚職法が依然として贈答や接待に厳格です。日本の多国籍企業がDOJの指針に沿ってグローバルな接待方針を緩和した場合、ブラジル法に直接違反する可能性があります。

また、米国では個人責任への追及が一層強調されるようになっている一方、ブラジルでは行政レベルでの個人責任追及は依然として限定的です。ただし、検察庁や経済防衛行政審議会(CADE)などの機関においては、この分野の重要性が高まりつつあります。こうした外部からの圧力は、ブラジル国内の内部改革を促進する一方で、適正手続の権利を巡る緊張を生じさせる可能性があります。

最後に、より広範な地政学的背景も無視できません。米国によるFCPAの執行強化は、中国がブラジルにおいて資金供給や戦略的プロジェクトを拡大し、影響力を強めている時期と重なっています。現地投資のパートナーとなることが多い日本企業は、特にインフラ分野で中国が関与するプロジェクトに参画する場合、より厳格な監視に直面する可能性があります。

まとめ

ブラジルで事業を行う日本企業にとって、メッセージは明白です。

コンプライアンス遵守は交渉の余地のない要件であり、ブラジルと米国の双方の要件を満たすよう調整されなければなりません

FCPA新ガイドラインにより、ブラジルと米国の同時捜査のリスクが高まり、第三者、契約、仲介経路の厳格なモニタリングの必要性も増大しています。

単なる形式的なコンプライアンス観だけでは不十分であり、国際基準と整合させつつ、現地法との一貫性を保持することが不可欠です。

こうした実質的なコンプライアンス・プログラム構築は、単なる規制問題にとどまらず、グローバル環境における企業の生存および競争力を確保するための戦略とも言えるでしょう。

(了)