このFCPA執行における戦略的転換は、企業の日常業務において極めて明確な影響を及ぼすことになります。単なる調査手法の更新にとどまらず、DOJは以下二つの主要な軸を強調しています。
個人責任の追及
- 伝統的に犯罪組織に適用されてきた「米国組織的犯罪に関する連邦法(RICO)」を含む手段の活用を拡大し、これを国際的な汚職スキームにも適用すること
国際協力における実務的アプローチ
- 米国外の関与者を含む場合でも、より広範な影響を有する、または組織犯罪ネットワークに関連する事件を優先すること
日本企業は、一般的には組織犯罪とは結びつかないものの、この戦略転換は、ラテンアメリカに所在する子会社に対して直接的な影響を及ぼす可能性があります。例えば、物流やインフラ供給契約において、仲介業者がブラジルの公務員に疑わしい支払いを行うケースが考えられます。同様の状況は、警察当局や組織犯罪と関係している場合が多い警備サービス業者にも当てはまります。このように、ブラジルにおける行政責任に留まらず、当該企業はDOJの捜査対象となり、FCPAとRICOの両方が同時に適用されることもあり得ます。
特にブラジルでは、汚職と組織犯罪の結びつきは依然として過小評価されています。しかし、港湾や物流業者に関わる事例 ― リオデジャネイロを含む ― は、贈賄が密輸や違法取引と表裏一体であることを示しています。米国に資産を有する、または米国に上場している日本企業が同様の状況に関与する場合は、新ガイドラインにより、これまで以上に厳格な基準のもとで、ブラジル当局と米国当局による協力が行われる可能性が高くなります。
さらに、DOJは、虚偽の契約や仲介業者を通じて偽装された支払いに対しては、経営幹部に対しても厳格な対応を行うことを明確にしています。なお、石油・ガス、インフラ、テクノロジーといった、日本企業がブラジルで強い存在感を持つ分野は、自動的に高リスク領域に分類されています。
