レオポルド・パゴット(Leopold Pagotto):弁護士(ブラジル在住)
サラ・リマ(Sarah Lima):弁護士(ブラジル在住)
ブラジルで事業を行う日本企業、特に米国の「海外腐敗行為防止法」(Foreign Corrupt Practices Act、以下「FCPA」)の適用を受ける企業にとって、ブラジルのコンプライアンス規制の遵守は、もはや回避できない要件となっています。
では、2025年6月改正のFCPAは、ブラジルに事業展開する日本企業にどのような影響を及ぼすのでしょうか。以下、その背景と今後の留意点について解説します。
グローバルに事業を展開している日本企業の多くは、ブラジルにおいてもインフラ、物流、テクノロジー、石油・ガスなどの戦略的分野で重要な事業活動を行っていることから、この問題は極めてセンシティブな性質を持っています。
近年の事例は、こうしたコンプライアンス・リスクがいかに深刻な結果を招き得るかを示しています。
例えば、米国当局の捜査を受け、その国際的事業活動に影響を及ぼした東芝の事例や、石油・ガス分野における贈賄で告発された日揮の事例は、日本企業が国際的スキャンダルに巻き込まれる可能性を明確に示しています。中には、ブラジルにおける契約や投資に直接的な影響を及ぼした例もあります。
このような状況より、ブラジル法(2013年法律第12,846号)のみならず国際的な規制との整合も図った、堅牢で実態に即したコンプライアンス・プログラムの構築が不可欠であることが浮き彫りになってきています。さらに、2025年6月5日に米国司法省(Department of Justice、以下「DOJ」)が新たなガイドラインを公表したことによって、この懸念は一層切迫したものとなっています。
