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【台湾弁護士特別寄稿】台湾における不適任従業員の解雇に伴うリスクと対応策《後編》

PIPの実施プロセスと構成要素

PIPの具体的な内容やプロセスについて、主に以下のような項目が挙げられます。

1. 改善すべき問題の明確化

特定の対象従業員にあるパフォーマンス上の問題点、または問題となっている具体的な行動、スキルなどの改善点を明示することが重要です。例えば、ある従業員に、よく書類の提出期限を守れていない、業務上書類の数値をよく間違えている、勤務態度が悪いこと等があれば、箇条書きで明記することが重要です。

2. 目標設定

具体的な業績目標や行動目標を設定すること。この場合、具体的で客観的な基準(例えば数字化されたもの)、かつ実現可能な目標が望ましいと考えられます。また、どのような基準で「改善」が認められるかも明示した方がよいと考えられます。本件で言いますと、例えば、➀取引先との成約業績〇%/ニュー台湾ドル〇を設定すること、②業務上の書類のミスの上限回数を一定期間〇%/〇回と設定することなどです。

3. 期間設定

改善・評価期間を明確に設定すること。通常は3ヶ月から6ヶ月の間が一般的だと考えます。また、例えば、3ヶ月を1期とする場合、1期だけよりも、2期(合計6ヶ月間)のPIPを実施してもなおパフォーマンスが改善できなかった場合、解雇がより正当性があるものとして認められると考えられます。

4. 定期的なチェック

定期的なチェックの面談スケジュールを設定し、PIP期間中に、定期的に実施状況をチェックし、そして対象従業員との面談を設けて実施状況のフィードバックやアドバイスを行うことも重要です。

5. 結果評価

PIPの実施結果そして対象従業員の改善状況に基づいて、例えば職務内容の調整、降格、解雇等の人事措置を検討する必要があります。

6. その他

(1)必要なサポートの提供
PIPの実施にあたって、例えば目標達成に向けて改善策の提案、必要な教育訓練、リソース等のサポートの必要があれば、提供する必要があります。

(2)書面記録の保存
PIPの実施過程に関する書面記録(例えば目標の設定、面談記録、結果評価等)をなるべく保存しておくことも推奨します。

以上のようなPIPの運用は、従業員の解雇にあたって、「会社が客観的かつ合理的な評価プロセスで評価をしたかどうか」という点に緊密に関わります。会社は従業員を解雇するにあたって、①「客観的かつ合理的な評価プロセスで評価をしたかどうか」という要件を満たさなければならないほか、②「会社は従業員が不適任であると判断したとしても、解雇は最終的な手段として、解雇ではなく、配転や解雇以外の人事処分の方が適切ではないか」という点にも注意を払う必要があります。この問題の実務上の運用方法については、別途、筆者が改めて記事を執筆し、読者の皆様と共有する予定です。

(了)