前編に引き続き、本稿では、「不適任」とされる従業員の雇用契約終了に関する実務対応を取り上げます。後編となる今回は、近年、実務現場において導入事例が見られる「業務改善計画(Performance Improvement Plan、以下PIP)」に焦点を当て、その活用方法および法的留意点について解説します。
業績改善計画(PIP)による法的リスクの低減
一方、パフォーマンスがあまりよくない従業員がいる場合に、会社が労働基準法第12条第5号の「従業員が不適任である場合」に基づき解雇を検討するにあたって、どのようにPIPを運用することで法的リスクをヘッジできるかにつき、近時の台湾の裁判所の意見をまとめて、以下の通りご説明いたします。
PIPの実施に対する従業員の同意
まず、PIPの実施について、台湾の裁判例では、
- 客観的に対象従業員がPIPの実施とその内容を了解したか否か
- 対象従業員の主観上はPIPの実施を了承した(黙示の合意も含む)かどうか
が審査される場合があります。従って、まず、会社の内部規定において、PIPの実施に関する規則が定められているか確認すべきです。そして、個別の従業員に対しPIPを実施することになった場合、書面証拠として、例えばPIPの実施に関する面談記録や業績改善計画書において、対象従業員に署名してもらう方がよいと考えられます。なお、その際、目標達成や改善が見られない場合の具体的な結果(例えば、降格、解雇など)も明記した方がよいでしょう。