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【ブラジル弁護士特別寄稿】ブラジルおよびその他の地域における児童労働対策と企業方針への組み込み

一方で、児童労働の防止に積極的かつ継続的に取り組む企業は、規制当局、消費者、投資家から高く評価されています。具体的には、サプライチェーン監査の実施、サプライヤーとの契約における児童労働禁止条項の明記、徒弟制度の導入などが、企業の信頼性を高め、市場や規制当局からの評価向上につながります。

例えば、労働検察庁は、企業が社会的デューデリジェンスの仕組みを取り入れた自主的な方針を導入することを推奨しています。特に、農業、鉱業、繊維産業、物流業といった、歴史的に労働違反が多く発生している業界においては、生産チェーン全体のリスクを把握するための「リスクマッピング」が推奨されています。

また、法的要件を超えて、技術学校との提携や若年層向けの職業訓練への投資、教育支援プロジェクトへの協力を行う企業は、ベストプラクティス事例として、公式レポートやビジネスフォーラムで紹介されることが多々あります。これにより、”法令遵守にとどまらず強固な社会的責任を果たす企業”としてのイメージ構築にもつながります。

コンプライアンス方針は、形式的な法的要件を満たすだけでなく、ESG(環境・社会・ガバナンス)原則と整合した、予防的かつ体系的なアプローチを採用することが重要です。こうした観点から、ブラジルで事業を展開する日本企業は、自社の行動規範、調達方針、サプライヤーマニュアルについて、以下の点を踏まえた見直しを行うことが推奨されます。

  1. サプライヤーや外部委託業者を含め、あらゆる形態の児童労働を明確に禁止すること
  2. 安全な通報メカニズムを備えた効果的な内部通報制度を実施すること
  3. 特に社会的・経済的に脆弱な地域において、商業パートナーの定期的な監視・監査を行うこと
  4. 児童労働の法的リスクおよびレピュテーションリスクについて、現地チームおよびサプライヤー向けの研修を実施し、誠実な企業文化を促進すること

本レポートではブラジルに焦点を当てていますが、児童労働のリスクは、インド、中国、東南アジアといった他の戦略的市場においても存在します。そのため、日本企業においては、各国固有の法制度や文化的背景を尊重しつつ、子どもおよび青少年の保護に関するグローバルな基準を維持しながら、これらの対策を他地域の事業運営およびサプライチェーンにも適用・展開していくことが強く推奨されます。

企業の存在意義や真の社会的価値が、より厳しく問われる時代となった今、児童労働の撲滅はもはや法的義務にとどまらず、倫理的リーダーシップを示し、差別化を図る重要な機会となります。

(了)