【《週刊》世界のガバナンス・ニュース#9】アップル、アディダス、H&M、GAP、英国マクドナルド、越CMEソーラー
アップル取締役会「多様性対策撤回」の動きに追随せず
米IT大手アップルの取締役会は株主に向け、2月25日に開かれる株主総会で「多様性・公平性・包括性(DEI)」プログラムの撤回を求める提案に反対するよう呼び掛けた。米大手企業の間では、第2次トランプ政権の発足を前に、保守派からの圧力に押される形でDEI関連の施策を廃止する動きが相次いでいるが、アップル取締役会はそうした流れに追随しない構えだ。
AFP通信によると、アップル株主に対しては、保守系シンクタンク、全米公共政策研究センター(NCPPR)が、訴訟リスク回避のためDEIプログラムの撤廃を検討するよう提案。連邦最高裁が2023年、大学入学選考で人種的少数派を優遇する「アファーマティブ・アクション」に違憲判決を下したことを踏まえたものだ。
しかし、同社取締役会は、会社としてコンプライアンス体制をすでに確立しており、提案は無用と反論。「法律による保護に基づき、採用や雇用、研修、昇進面で一切差別はしない」と啖呵を切った。
米国ではマクドナルドやフォード、ウォルマートといった主要企業や、フェイスブックやインスタグラムを運営するメタなどIT大手が、DEI関連の取り組みの廃止を相次いで表明している。アップルが最終的にどう対応するかは、株主総会に委ねられることとなった。
【米アップル】Inclusion & Diversity
https://www.apple.com/diversity/
アディダスやH&M、GAP「インドの児童労働」で栽培された綿を買い付け
世界的なアパレルブランドの独アディダスやスウェーデンのH&M、米国のGAPが、インドの農場で児童労働によって栽培された綿を買い付けていると指弾する報告書が、NPO(非営利組織)によって公表された。
報告書をまとめたのは米ニューヨークに本拠を置くトランスペアレンテムで、2022〜23年にインド中部マディヤプラデシュ州の綿農場90カ所の労働条件を調査した結果、「児童労働と違法な未成年労働の横行」が明らかになったと指摘している。
報告書によると、同州では「深刻な虐待」が確認されたほか、他の農場でも違法行為が横行している可能性が高い。調査対象となった農場はインド企業3社に綿を納めており、この3社がアディダスやH&M、GAPなどに綿花製品を売却していた。
インドの法律では、14歳未満の就業が禁止されており、14〜18歳は危険な仕事への従事が禁じられているが、緩い取り締まり態勢と貧困のため、5〜14歳の子ども1000万人超が就労し、その多くは農業部門で働いているという。
【トランスペアレンテム】From Field to Fabric: Enhancing Due Diligence in Cotton Supply Chains India
https://transparentem.org/report/india-from-field-to-fabric/
英国マクドナルド、ハラスメントめぐり若年社員700人に提訴される
米ファストフード大手マクドナルドの英国事業運営会社が、各種のハラスメントに関与したとして、若手従業員700人以上に損害賠償請求訴訟を提起された。
訴えたのは勤務時に20歳未満だった現・元従業員で、法律事務所リー・デイが集団訴訟として取りまとめている。
リー・デイによると、ハラスメント行為には450超の店舗が関与。被害者は「ホモフォビア(同性愛嫌悪)や人種差別、エイブルイズム(非障害者優先主義)」などに遭ったとしている。
マネジャーや同僚からホモフォビア的な発言を浴びた19歳の従業員は、「受け入れられないなら仕事を辞めろ」と言われた。性的関係を繰り返し求められたり、勤務中にマネジャーに体を触られたりしたセクハラ事案もあったという。
【リー・デイ】McDonald’s claim
https://www.leighday.co.uk/our-services/group-claims/mcdonalds-claim/
越CMEソーラー、英政府・世銀等の基金から2000万ドル調達へ
ベトナムの再生エネルギー企業、CMEソーラーは、英政府や世界銀行などが出資する民間インフラ開発グループ(PIDG)が創設した「新興アフリカ・アジア・インフラ基金」(EAAIF)から、2000万ドル(約31億5000万円)の投資を受けることで合意した。
投資資金は、CMEが国内で進める、屋根置き型太陽光発電プロジェクトに充当される。
ベトナムではエネルギー源の45%が石炭火力で賄われているが、エレクトロニクスや繊維、建設、鉄鋼といった主要産業に対しては、電源転換へ向けた圧力が高まっている。
EAAIFとしては、CMEへの投資を通じて、電源構成に占める再生エネの割合を2030年までに39.2%に引き上げ、50年までに温室効果ガス排出量実質ゼロ(ネットゼロ)を実現するとのベトナムの目標達成を支援する狙いがある。
【EAAIF】EAAIF invests USD 20 million in CME Solar (“CMES”) to power Vietnam’s manufacturing sector with clean energy sources
https://www.eaif.com/eaaif-invests-usd-20-million-in-cme-solar-cmes-to-power-vietnams-manufacturing-sector-with-clean-energy-sources/
(毎週火曜日連載、次回#10は1月21日公開予定)
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