presented by D-QUEST GROUP

パワハラあるある「危険リスト」ますます増加中【野村彩弁護士の「ハラスメント」対策講座#5】

アルハラ、コロハラ、リモハラ、リスハラ…

最近では「○○ハラ」という言葉が数限りなく増えている。これらの○○ハラの中には、それがそのままパワハラにも該当する、ということもよくある。

例えば「アルハラ」、つまりアルコールハラスメントと称される、部下にお酒を無理矢理飲ませるという行為は、非常にパワハラになりやすい。これに「上司の言うことが聞けないのか」などの脅迫的なセリフが伴う場合は、強要罪(刑法223条)として犯罪にもなりかねない。また、一気飲みをさせて急性アルコール中毒になったりした場合は傷害罪(204条)の可能性がある。横でコールをしていた者は共犯となることもある。

次に、数年前、新型コロナ感染症拡大に伴って「コロハラ」も話題になった。新型コロナ感染症に感染した人に対して差別をしたり、「あいつコロナ明けらしいよ。近づかないほうがいい」と不適切な噂を流したりするなどの行為は、やはりパワハラと言えるだろう。

このころ同時に広がったのが「リモハラ」である。リモートハラスメント、つまり在宅勤務におけるパワハラを指す。例えば、オンライン会議中に映った部屋の様子についてしつこく詮索するとか、必要以上に業務の様子を画像で投影しておけと命じること、などが事象として起きていた。

また、違法な退職勧奨として、それが同時にハラスメントでもあるとされるのが「リスハラ」、いわゆるリストラハラスメントである。「あなたにお願いできる仕事はない」「あなたの性格ではここは難しいですよ」「自分で行き先を探してこい」「男ならけじめをつけろ」などの言葉は実際に裁判例で問題になったセリフであるが、これらはリスハラでもありパワハラでもあると言われ得るだろう。

部下→上司、後輩→先輩の「逆パワハラ」はパワハラか?

「先生、ウチはね、部下が生意気なのよー。上司に対して結構なこと言ってくるの。これってパワハラにならないの?」と、ときどき冗談混じりでお尋ねを頂戴する。こちらにマジレスさせていただくと、「パワハラになることもあります」となる。

前述のとおり、パワハラとなるためには「優越的な関係」が必要となる。この点、行為者が上司で被害者が部下であれば、上司が部下に対して「優越」していることは間違いがない。先輩から後輩への言動も同様である。

しかしながら、上司よりも部下の側が「優越」している場面がないわけではない。例えばテクハラ(テクニカルハラスメント)。PC作業が苦手な上司に対し、部下が「こんなこともできないんですかぁ〜。そんな人とは仕事できませんね〜」と嘲笑して業務上必要な協力をしない、という場合。当該PC作業については部下の側が「優越」していると言えそうである。

また、同僚同士であっても、集団が一人をいじめるとか、営業成績が良いことを笠に着ていじめるといった場合、片方が「優越」していると認められる場合もあるだろう。 ちなみに、部下に厳しい指導をしたら「パワハラだ! 訴えてやる!」と言われた場合、それだけで逆パワハラとして部下側の行為が違法となる場面は少ないかもしれないが、「訴えてほしくなかったらカネを払え」と言われたら、それは恐喝(刑法249条)である。