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中村超硬「中国企業」の契約解除申立にシンガポール国際仲裁センターが中間判断【5月23日「適時開示」ピックアップ】

5月23日の日経平均株価は前日比174円高の3万7160円で取引を終えた。そんな5月23日の適時開示は456件だった。

譲渡先の中国企業から「契約解除」の申し立て

東証グロース上場で、ダイヤモンドや超硬合金などを用いた特殊精密部品の製造・販売を手掛ける中村超硬(大阪・堺市)は、5月23日に中国企業による仲裁申立ての中間判断について発表した。

同社を訴えているのは中国の「江蘇三超金剛石工具有限公司」なる会社。申し立ては2021年から続いているのだが、何があったのか……。

18年中国政府による太陽光発電に関する補助金打ち切り施策に伴い、中村超硬は主力製品「ダイヤモンドワイヤ」の中国での市場価格が7割以上も下落した。それを受け沖縄県と大阪府にある国内2工場を閉鎖。さらにダイヤモンドワイヤ製品事業から撤退することを決め、売却検討を始めた。

その際、中国国内の複数のダイヤモンドワイヤメーカーから買収の打診を受けていたが、19年6月に中国の古参企業かつ高度な技術力などを理由に南京三超新材料股份有限公司と譲渡の基本合意契約を結んだ。

そして同年8月30日には、南京三超社の完全子会社で、今回、中村超硬を訴えている江蘇三超社と譲渡額約22億円で正式契約を結ぶ。これによって、江蘇三超社はダイヤモンドワイヤ製造装置販売へと事業モデルの転換を進めるとしていた。

ところが21年11月17日、中村超硬は、江蘇三超社から契約義務が履行されなかったとして、この19年8月の正式契約を解除すると同時に損害賠償を求めて、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)に仲裁を申し立てられたのだ。

江蘇三超社の申し立ては、①本件契約の対価として江蘇三超社が中村超硬に支払った代金の返還=9.9億円、②中村超硬の債務不履行による直接損害額=1976万6134.97元(約3.5億円)、③生産設備の未稼働による逸失利益=5906万371元(約10.6億円)、④本仲裁費用=実費――の4項目(日本円はいずれも当時のレート)。

訴えられた中村超硬側は、契約の義務は履行しており、江蘇三超社の主張する契約解除事由は該当しないと自社の正当性を主張すると同時に、逆に、江蘇三超社に対して約12.1億円の契約代金の未払い額の請求を行うとしていた。